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オークネット総研ニュースレター配信  ~中古車流通を支える品質管理の最前線に迫る~
第2回:日本における中古車の検査について

2018年4月16日

 オークネット総合研究所(所在地:東京都港区/理事長:佐藤 俊司/URL:http://www.aucnet.co.jp /aucnet-reseach/)は、B to Bネットオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営し、独自の調査レポートなどを発表してまいりました。当レポートは、中古車流通市場や品質管理に関し、モビリティジャーナリスト・森口 将之氏に取材・調査を依頼し、ニュースレターとして配信するものです。
 第2回では、オートオークションに欠かせない中古車の検査について、中古車検査専門会社AISの評価システムと人材育成をレポートいたします。

1. AISの中古車検査とは

 前回のレポートでは、日本における中古車のB to B流通の歴史を振り返り、オートオークション普及についてまとめたが、そこでも紹介したように、インターネットを用い、現車を見ずに取引するオートオークションに不可欠となっているのが、オークネットが設立した中古車検査専門会社AIS(株式会社AIS)である。
 AISは1996年にオークネットの検査部門から独立分社化された当時はオークネット・インスペクション・サービスという社名だったが、2000年以降、自動車メーカー中古車事業会社の資本が入ったことを受け、2003年にオートモビル・インスペクション・システムになり、2014年に現在の社名となった。
 現在はトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、マツダ、SUBARUの中古車事業会社がAISへ出資しており、検査においては「六社※統一検査基準」と「自動評点システム」に採用され、中古車業界の健全な発展と信頼性の高い中古車の流通に貢献している。
※トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、マツダ、SUBARUの中古車事業会社とオークネットの6社
 また2010年には、AISが運用する検査データを「車両品質評価書」として発行する「車両状態評価システム」が、一般社団法人自動車公正取引協議会の監修を受けた。これにより、AISの検査を活用する中古車販売店は信頼性の高まった「車両品質評価書」を使用した小売販売が可能となり、消費者はより安心な中古車購入ができるようになった。

 このように多方面にわたるネットワークを構築した結果、2017年のAIS検査台数は約84万台、2017年までの累計では1000万台を超えており、中古車検査台数において、実績は業界ナンバー1である。

 AISが運用する中古車検査の評価基準は10段階で評価され、品質の高いほうから順にS点>6点>5点>4.5点>4点>3.5点>3点>2点>1点となっており、そこにR点が加わる。詳しくは評価点の目安表を見ていただきたいが、4点以上の評価点であればお勧めの中古車ということになる。
 逆に3.5点以下は外装、内装等の加修が必要となる中古車のイメージ、R点が付与されている場合は修復歴ありの意味となるが、走行には支障が無いということが前提となっている(例外あり)。
 なお、評価を決定するのはAIS認定検査員だ。AIS認定検査員は、約半年間の社内教育の末、難易度の高い検査員認定試験に合格する必要がある。また、認定試験合格後も年2回の定期研修受講、年1回の更新試験に合格しなければ、資格を継続することはできない。
 AISでは消費者からの信頼を得るため、このような検査員技能管理体制を徹底している。

2. 自動車販売店で活用される「AIS検定研修」

 またAISは、検査事業のほかに研修事業として自動車販売店スタッフ向けに検査技能育成を目的とした「AIS検定」を創設し、「AIS検定研修」を開催している。車両検査専門の第三者機関として、約30年以上に渡り培ってきた中古車検査の経験を活かした「AIS検定研修」の提供を行うことで安心・信頼できる中古車流通の促進に努めている。検定には3級、2級、1級の3階級があり、階級によって担当可能なレベルが異なる。
 3級検定は自動車販売員としてのスキルアップを目的に創設された資格で、自動車の製造工程や部位名称などの基礎知識から、ネジ止めパネルや溶接止めパネルの交換歴摘出、また中古車検査で最も重要視されている骨格部位損傷については、修復歴の考え方から摘出のポイントまで、下取り・買取・仕入にも有効な知識を習得できる研修となっている。
 2級検定は中古車全体にわたる瑕疵(かし)摘出能力を身に付けるために創設された資格であり、車両状態全般を表示する技能修得を目標としている。
 1級検定は中古車の車両状態全般から評価点を付与することが可能となり、オークション会場での検査業務等で役立つ技能を習得できる研修となっている。
 AISでは現在、関東、関西、九州の3か所に検定センターを開設している。ここまで充実した施設を持つところは他にないだろう。2017年の受講実績は2200名超え、累計で約1万8000名以上の方々が受講されている。
 今回は、千葉県八千代市にある関東会場を見せていただいた。
 関東会場の建物は2階建てで、約30台の車両が収容可能なスペースがあり、さまざまな車種が用意されている。これらはすべて研修用の教材となる。セダン、ハッチバック、ミニバンなどボディ形状が多彩で、さまざまなメーカーや年式の車両があるのは、構造が異なることに対処するためだ。

 教材用車両はオークションで仕入れる。受講者の理解を深めるべく、年式や車種だけでなく修理レベル等まで仕入れ条件を細かく設定していることから、教材に適した理想の1台に巡り合うのは実に4000台に1台ぐらいの割合だという。
 研修棟は1階がガレージ、2階が教室となっている。まず2階の教室を見せてもらう。部屋の中にはドアやピラー、クロスメンバーなどのパーツが並び、名称を記したラベルが各所に貼り付けてある。部位の呼び名を統一することも大事なのでこうしているそうだ。
 さらに机の上にはペーパークラフトが置いてあった。平面の写真や図では分かりにくいという声があり、立体的にイメージしてもらうために用意したという。

 ガレージではAIS検査を再現してもらった。車種によって異なるが検査項目は合わせて300箇所以上ある。検査員になるための認定試験は25分間で行うが、プロのAIS認定検査員の中には1台あたり10分で検査完了する人もいるそうだ。
 検査項目は外装、内装、機関機構、骨格損傷の4つに大別される。なによりも大事なのは事故判定、つまり修復歴があるかどうかだ。溶接にはスポット、ミグ、レーザーなどがあるので特性の違い、たとえば超高張力鋼板を再溶接する場合はスポットの数が決められていることなども見極めのポイントになる。
 さらに衝突時は、骨格部位にあらかじめ存在する「パネル急変部」や「打ち抜き穴」が歪んでいないかも決め手になる。塗装の剥がれは経年劣化との見分けが大事になる。
 外装は全体を見ることがまず大事だ。片方のライトだけ新品ということもある。ライトは紫外線を浴び続けると色が変わるので判断に有効。逆にフロントフェンダーやホイールは交換してしまうので区別がつきにくいという。
 外板パネル交換跡の摘出は、フェンダーパネルであれば「下地色」に注目する。またドアパネルであれば「ヒンジ取付け部」、「シーラント」、「下地色」等が交換と判断する際に重要なポイントとなる。
 もうひとつ、修復歴車かどうかを判定する際に挙げたのが、確証証拠か状況証拠かという違い。確証証拠はそれだけで修復歴と確定できるのに対し、状況証拠はそれだけでは明確な答えとならない。後者の際は複数の状況証拠を集める必要がある。

 3級検定の場合はここで2日間の研修を行う。試験は学科と実技があり、80%以上の正解で合格になる。合格率は6~7割とのことだ。不合格者のための「リトライ」コースもある。

 2級検定は3日間の研修、1級検定は4日間×5回で20日間の研修を要する。AIS検定資格は2年に1回の更新が必要であり、知識や技能の維持を図っている。

 中古車販売店がAISについてどう感じているかも取材した。話を伺ったのは年間約800台の中古車を扱う、東京スバルG-PARK三鷹の伊藤貴之氏である。
 G-PARK三鷹が創業したのは11年前。東京都内のSUBARU直営中古車販売店では最大規模となっている同店は、全国のSUBARU直営中古車販売店に先駆けて認定中古車制度を導入した店舗でもある。

 AISを導入した理由として伊藤氏は、しっかりしたクオリティとジャッジで中古車のブランド力を上げることを念頭に置いていたことを挙げていた。社員よりも外部の目でチェックしたほうが公平ではないかという気持ちから、AISの選択に至ったそうである。

 伊藤氏自身も早い時期にAIS検定を受けており、骨格部位などの呼び方、修復歴を見抜く方法、修理跡摘出のポイントなど、いろいろ勉強になったと話していた。現在はスタッフ全員がAIS検定3級以上の資格を持っている。
 ちなみにSUBARUの中古車販売会社は、国内自動車メーカー系ではもっともAISの使用実績が多い。これについて伊藤氏は、「(SUBARUは)技術主導のメーカーであり、実直な社風が関係しているのではないか」と語っていた。
 AIS検定を導入した効果としては、中古車を評価する精度が上がり、公正なジャッジができるようになったことを挙げた。AISが運用している10段階の評価も、顧客からの信頼につながっているという。
 現在はインターネット販売が約4割を占めるそうで、現車を見ずに買う人が増えている。東京は走行距離が伸びていない中古車が多いことから、地方から探しにくる人も多い。こうした状況下、更にAISが運用する「評価基準」が重要になっているようで、点数が高い中古車は閲覧数も上がり、販売の決め手になることも多いという。時には業販の相手からAISが付与した評価点を聞かれることもあるそうだ。

 ゆえに一度検査を受けたものの、良い評価点ではなかった場合には、再度整備や修理を行い、再検査する事で評価点を上げることもあるという。それだけ中古車販売におけるAISが付与する評価点は重要ということなのだろう。
 さまざまな現場を見ることで、AISが中古車販売店と顧客の間に存在していた不安要素を解消し、双方にメリットを与えていることが分かった。

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筆者

著者:森口 将之(もりぐち まさゆき)
モビリティジャーナリスト・株式会社モビリシティ代表取締役

 1962年東京都生まれ。早稲田大学卒業。自動車専門誌編集部を経て1993年にフリージャーナリストとして独立。自動車分野では自動運転からクラシックカーまで幅広いジャンルを担当し、新聞、雑誌、インターネット、ラジオ、テレビなどで活動中。自動車以外の交通事情やまちづくりなども精力的に取材しており、2011年には同分野でリサーチやコンサルティングを担当する会社、株式会社モビリシティを設立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。日本自動車ジャーナリスト協会、日仏メディア交流協会、日本福祉のまちづくり学会、各会員。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「富山から拡がる交通革命」(交通新聞社)「これから始まる自動運転 社会はどうなる!?」(秀和システム)など。

<オークネット総合研究所 概要>
当総合研究所は、1985年に世界初の中古車TVオークション事業をスタートし、以来30年にわたりオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営。これまで培った実績とネットワークを活用し、専門性、信頼性の高い情報を発信することで、更なる業界発展に寄与することを目指しています。

所在地:〒107‐8349東京都港区北青山二丁目5番8号 青山OMスクエア
理事長:佐藤 俊司
U R L:http://www.aucnet.co.jp/aucnet-reseach/

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<本件に関するお問合せ>
株式会社オークネット 広報担当:土屋 貴幸、吉岡 基樹
TEL:03-6440-2530  E-MAIL:request@ns.aucnet.co.jp

※本資料を利用される際は、オークネットにご一報の上、提供元を「オークネット総合研究所」と明記して、ご利用ください。



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