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オークネット総研ニュースレター配信  ~世界の中古スマートフォン流通市場の実態を探る~
第5回:わが国におけるスマートフォン修理をめぐる動向

 2016年1月27日

 情報流通支援サービスの株式会社オークネット(本社:東京都港区/代表取締役社長:藤崎清孝/URL:http://www.aucnet.co.jp)は、運営する『オークネット総合研究所』(所在地:東京都港区/代表理事: 山内 良信/URL:http://www.aucnet.co.jp /aucnet-reseach/)より、「中古スマホ流通」に関する
第5回ニュースレターを配信いたします。 本コラムは、モバイル研究家・木暮祐一氏に調査を依頼し、その実態をニュースレターとして月1~2回のペースで配信していくこととなりました。
 第5回は、中古スマートフォン流通にとって欠かせなくなる、スマートフォンの第三者修理をめぐる国内の動きについてレポートします。

1.端末修理にも厳格な法規制が伴うわが国の市場

 これまで4回にわたって、世界の中古スマートフォン(以下、スマホ)の流通経路等についてレポートしてきた。とくに国内でユーザーが手放したスマホがいくつかのルートを経て香港を経由し世界に流通していることが分かってきたが、そうした端末が一方では国内市場にあまり出回っていない現状も見えてきた。中古スマホといっても、香港や中国で流通していた端末の程度はまちまちであり、中国・深センではそうした端末を修理・再生する商店が存在することも明らかになった。では、日本国内ではそのような端末修理や再生は、はたして行われていないのだろうか。

 じつは、iPhoneがある程度普及したのち、街中にはスマホの修理を専門に行う業者が顕著に増加している。大型のディスプレイを備えたスマホは、落下等で端末を破損させてしまうケースは少なくない。また、 2年間の利用を前提とした回線契約が伴うため、スマホを破損させた場合に修理をしてでも継続して利用せざるを得ないという事情もある。
 Appleは、Apple StoreAppleの正規サービスプロバイダ、およびオンラインでiPhoneの修理対応を行っており、これらでの修理が推奨され、その場合はメーカー保証等も継続される。しかし、保険等(Appleの「AppleCare+」や、NTTドコモの「ケータイ補償サービス」など)に未加入であると高額の修理費がかかることになる。保険等に加入していないユーザーは、安価に修理してもらえる非正規修理店にやむを得ずスマホを持ち込むことになるのだが、そうした非正規修理店で修理をした場合はメーカー保証が受けられなくなるばかりでなく、その後の有償修理さえも受けられなくなる場合がある。

 かつて、こうした非正規修理店を取材したことがあったが、修理に使用するスマホ用パーツは、より安価な修理を求める消費者ニーズに応えるために、中国製の非純正部材が使われていた。こうしたパーツで修理を受けたスマホ端末は、じつは電波法に抵触する危険もある。日本においてスマホ端末は「特定無線設備」(携帯電話等の小規模な無線局に使用するための無線設備)に該当し、電波法等に基づいた技術基準適合証明の「技適」マークが付与されている。これによってその端末が、法令に反しない形で電波を発していることを担保している。

 総務省で電波法、電気通信事業法、基準認証制度全般を所轄する総合通信基盤局電波部電波環境課の話では、スマホ等の端末(=無線局)の状態だが、端末の技術基準適合証明を受けた状態で使用しなくてはならないというのが大原則となる。
 一般的に携帯電話等は外装も含めて一体的に「無線機」として認定を受けている。申請内容においては、各パーツ部材の材質や製造工場等も届け出ることになっている。このため、ディスプレイパネルや外装を交換したというようなケースで、非正規部材で行った場合は違法となってしまう場合があるということだ。違法無線局となると電波法違反に問われる可能性があり、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金がユーザーに科せられる懸念がある。

 iPhoneを販売しているAppleは自社や正規サービスプロバイダ以外での修理は認めておらず、部品の販売もしていない。数多くある街の非正規修理店では、結局のところ中国の商社などから部品を仕入れて修理を実施しているようだ。

2.端末修理は新たなビジネス市場として期待される

 総務省は2012年に、電波の有効利用のための諸課題及び具体的方策について検討するため、総務副大臣の主催する『電波有効利用の促進に関する検討会』を開催した。この検討会では、たとえばスマホによるデータ通信の混雑をどうするかといった課題や、大規模災害に強い通信システムはどうあるべきか、などといった諸課題の洗い出しとその具体的方策についての検討が行われたが、この中で「電波利用環境の変化に応じた規律の柔軟な見直し」という議論も進められた。
 じつはここで初めて「グローバルな流通の促進と技術基準適合性の確保」という項目の中で、iPhone等のスマホ修理やカスタマイズに関わる話題が議題に上がったのである。

 この検討会では、修理やカスタマイズしたスマホのことを「修理再生した無線設備」と呼んでおり、こうした端末が「米国では製造業者が自ら行うことはなく、第三者たる修理業者が、製造業者から委託を受けるか又は技術情報等の提供を受けながら修理を行っている。」「米国では、第三者が修理再生した無線設備について、技術基準適合性が確認できる制度が導入されており、このため、修理再生した安価な携帯電話端末が市場に出回ることを通じて、携帯電話端末の多様性やグローバルな市場の拡大が図られている。」との意見を引用し、一方でわが国では「第三者たる修理業者が、自ら修理再生した携帯電話端末の無線設備について、技術基準適合性を確保するための手続が明確となっていない。このように、修理再生された携帯電話端末の無線設備が市場で流通することで、再生製品の利用による資源の節約、製品寿命の長期化等の観点から環境問題に貢献するほか、消費者に安価な携帯電話端末の提供が可能となる等のメリットがあることから、第三者が独自に修理再生した無線設備に対しても、技術基準適合性を確認できるような仕組みの早急な検討が必要と考えられる。」とし、スマホの修理やカスタマイズ事業の合法化に向けた検討が行われた。

 またこの検討会の中で米国における第三者による修理再生事業に関する情報についても、事例として
アシュリオン・ジャパン株式会社が報告を行なった。それによると、米国内のメーカー保証内修理が年間1,0001,300万台に対し、メーカー保証外修理・再生は1,1001,400万台あり、その保証外修理・再生は全てをメーカーではない外部の修理事業者が行なっており、その市場規模が年間1,0001,400億円にも上っていたという。つまり、わが国において非正規修理店が乱立していく中で、技術基準を担保できるようにすることで、こうした「第三者修理」がそれなりの市場規模の産業に成長し得ることが考えられると示唆された。

 201212月に同検討会の報告書が取りまとめられ、この中で「わが国においても、技術基準適合性の有効性を担保しつつ、第三者による独自の修理再生を可能とする方策を明確化することが望ましい。」と報告された。これを受け、20133月、東京工業大学大学院理工学研究科の高田潤一教授を座長、中央大学総合政策学部の平野晋教授を座長代理、ARIB(電波産業会)を事務局として、主要携帯電話会社と端末メーカー、認証機関などが参加し、総務省をオブザーバとする「携帯電話端末修理事業連絡会」が立ち上がった。

 この連絡会が201311月に総務省に対して改めて関連法制度改正要望を提出し、20142月に電波法改正案の閣議決定に至った。20152月には総務省令登録修理業者規則が制定され、修理の方法、体制並びに結果について電波法令および電気通信事業法令の技術基準への適合性維持が確認できる事業者が「登録修理業者」として登録され修理事業を行うことができることとなり、20154月からこれが運用されることとなった。

図 1

3.とはいえ登録修理業者の登録はまだ敷居が高い

 20154月から施行された登録修理業者制度であるが、今後国内でスマホを修理する第三者修理業者は法人、個人の大小を問わず、必ず申請及び登録が必要となる。しかしながら、その登録は非常に高いハードルがある。すなわち第三者である修理業者が修理を行う場合、その修理が電波特性に影響を与えるかどうかが不明であること、ユーザーは修理業者の信頼性をどう判断するか、などといった問題をどう解決するかが指摘されるようになった。

 そこで登録修理業者は、登録した修理方法書に修理を合致させること、検査記録の保存、修理したことの表示、改善命令、報告徴収・立ち入り検査を受け入れる義務などが課されることとなった。

 結局のところ、登録修理業者が行える修理内容は、ディスプレイ、フレーム、マイク、スピーカー、カメラ、操作ボタン、差込口、コネクタ、バイブレータの交換などで、電波の質に影響を与える可能性が低い部分に限られる。また登録修理業者による修理であっても、メーカーによる保証は無効になる点は変わらない。

 20161月現在で、登録修理業者として登録されているのは、NTTドコモの「ケータイ補償サービス」を請け負っているアシュリオン・ジャパン株式会社のグループ会社であるAsurion Technology Japan株式会社と、「Smart Doctor」のブランドでスマホ修理事業を手掛けてきた株式会社クレア、そして代理店事業などを行うMXモバイルグループのモバイルケアテクノロジーズ株式会社のみである。
 クレアは全国にすでに23店舗の修理店を展開しているが、このうち総務大臣登録済みの店舗は直営店の7店に留まり、FC店である残る16店は登録準備中としている。これは総務省への登録修理業者としての登録申請において、法人ごとに申請が必要という課題がある。直営店は株式会社クレアとして申請し登録を受けたが、FC店に至ってはそれぞれ別法人が経営しているため、現状の法律ではそれぞれの法人ごとで申請・認可を受ける必要があるためという。
 クレアの担当者は、まず正規の登録修理業者として認可を受けるために総務省本省へ何度も足を運び、ここまでたどり着けたという。FC店の問題も引き続き総務省と調整中ということであった。総務省としても、FC加盟店としての申請は初めてのケースとなるため、慎重に対応をしているようだ。

     図2

 総務省に登録申請するにあたっては、莫大な費用もかかるという課題もある。クレアによれば、修理した端末の電波特性等の計測を行い、その結果を総務省に提出しなくてはならないのだが、これが端末の技適を取得するのと同等の試験が求められることになる。すなわち、実際に修理した端末を認定機関に持ち込み、電波特性等を測定し、電波法に抵触するような問題がないという計測を行う必要がある。しかもその測定には1モデルごとに申請を行わなくてはならない。
 クレアの場合でも1モデルあたりの申請費用が「軽く100万円以上かかった」ということだ。となると、歴代のiPhone端末を測定するとしたら1000万円を超えてしまう。

 このように、まだ課題が多く、登録認定も決して容易ではない登録修理業者制度であるが、この制度の健全な発展を促進するという目的で、20155月にはAsurion Technology Japanを中心に「携帯端末登録修理協議会」という団体も立ち上がっている。同協議会では登録修理に関連する、課題のとりまとめや、業者向けの各種マニュアル、基準などの作成、情報の共有及び問題の解決支援、などを行っていくという。
 また、クレアも同様に「一般社団法人スマートフォン登録修理業協会」を設立し、登録実績のある修理事業を専門とする業者同士でノウハウを共有していくとしている。メーカー系以外の業者であっても安心して修理を依頼できる証となることや、違法修理業者を排除することにより修理業界の健全な発展を主な目的としている。

 登録修理制度はまだ施行されたばかりであり、こうした諸団体の動きも含め、今後第三者修理に関わる事業者に様々な動きが出てくると考えられる。本稿冒頭やこれまでに公表してきたレポートで、わが国では国内で生じた中古スマホが国内で消費されず、海外に流れている点を指摘してきた。
 じつは、わが国で中古スマホを修理・再生させて商品化するには、電波法をはじめとする法令に遵守した修理機関が求められてきたが、これが制度としてようやくスタートしたという段階にある。このため、国内で合法的に流通させることができない第三者修理による修理・再生端末が、結局のところ海外に販売せざるを得ない状況にあったと捉えることもできる。
 国内の中古スマホ市場を活性化させるためにも、いち早く法令に遵守した第三者修理の体制を整えていく必要があると感じる。

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 1967年、東京都生まれ。黎明期からの携帯電話業界動向をウォッチし、2000年に(株)アスキーにて携帯電話情報サイト『携帯24』を立ち上げ同Web編集長。コンテンツ業界を経て2004年独立。2007年、「携帯電話の遠隔医療応用に関する研究」に携わり徳島大学大学院工学研究科を修了、博士(工学)。スマートフォンの医療・ヘルスケア分野への応用をはじめ、ICTの地域社会での活用に関わる研究に従事。モバイル学会理事/副会長、ITヘルスケア学会理事。近著に『メディア技術史』(共著、北樹出版)など。1000台を超えるケータイのコレクションも保有している。

<オークネット総合研究所 概要>
 当総合研究所は、1985年に世界初の中古車TVオークション事業をスタートし、以来30年にわたりオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営。これまで培った実績とネットワークを活用し、専門性、信頼性の高い情報を発信することで、更なる業界発展に寄与することを目指しています。

所在地:〒107‐8349東京都港区北青山二丁目5番8号 青山OMスクエア
代表理事:山内 良信
U R L:http://www.aucnet.co.jp/aucnet-reseach/

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<本件に関するお問合せ>
株式会社オークネット 広報担当:降旗(フリハタ)
TEL:03-6440-2530  E-MAIL:request@ns.aucnet.co.jp

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