ニュース・トピックス

ニュース・トピックス 詳細

オークネット総研ニュースレター配信  ~世界の中古スマートフォン流通市場の実態を探る~
第2回:香港の中古スマートフォン業者オークションの実態

 2015年10月27日

 情報流通支援サービスの株式会社オークネット(本社:東京都港区/代表取締役社長:藤崎清孝/URL:http://www.aucnet.co.jp)は、運営する『オークネット総合研究所』(所在地:東京都港区/代表理事:山内 良信/URL:http://www.aucnet.co.jp /aucnet-reseach/)より、「中古スマホ流通」に関する第2回ニュースレターを配信いたします。 本コラムは、モバイル研究家・木暮祐一氏に調査を依頼し、その実態をニュースレターとして月1~2回のペースで配信していくこととなりました。
 第2回は、中古スマートフォン世界最大の市場といわれる香港にて、買付業者向けオークション現場に潜入。先進国各国から買い集められてきた中古スマートフォンの業者間取引現場をレポートいたします。

1. 厳重にセキュリティが掛けられた中古スマホ倉庫

 本レポートの第1回では、世界の中古スマートフォン(以下、スマホ)の流通経路について、その取引に関わっているTelecom Generation Company Limited(本社:香港/以下、TG社)のKen Luo氏よりヒアリングし、その全貌について報告した。世界の中古スマホ市場は基本的に先進国が流出元となり、そこから新興国、発展途上国へと流れている。
 アジアを中心とした市場においては、Luo氏の会社をはじめとする中古スマホ流通業者の手によって日本、北米、韓国等から買い集められた中古スマホが一旦香港に集約する。そして香港にはアジア各地の買付業者が集まってきて、そうした買付業者向けにオークションが行われ、これによって各国へ転売されていくという事実を知ることになった。

 TG社でも毎週2回ないし3回の買付業者向けオークションを実施している。端末の流通量が多いときは開催回数が必然的に増えるという。筆者がこのオークションの現場を取材したタイミングはiPhone 6s/6s Plusの発表直前の時期だったため、買い控えなどもあって流通量はそれほど多くはないタイミングということだった。iPhone 6s/6s Plusの販売が開始された現在、その新型端末への買い替えによって旧モデルの中古流通量は今まさに激増している時期である。こうしたタイミングでは、オークションの開催も増えるという。

 このオークションはあくまで買付業者向けのものであり、一般の消費者は足を踏み入れることはできない。また、中古スマホの流通経路も機密事項が多く、ときには出所を伏せた流出品ともされる端末や修理用部材なども取引されるため、こうした現場にメディアが入ることも本来であれば許されない。したがって、その実態を日本で明らかにするのは本レポートが初となる。

 TG社のオークション会場は中心部からやや離れた倉庫街に立地する。香港の携帯電話市場というと、香港中心部の旺角(モンコック)にある先達廣場などの携帯電話ショップ密集ビルなどが知られており、業者向けの卸販売も行っていることから、中古スマホ買付業者向けオークションもこの辺りに多いのではと思われがちである。しかし、TG社規模の中古スマホ流通量を扱う企業では、スマホ端末を保管するためにそれなりの広さの倉庫が求められる。したがって、中心部からやや離れた倉庫街にオフィスを構え、倉庫に隣接したオフィスでオークションを実施している。

 まずはLuo氏の案内で、世界から買い付けてきた中古スマホを保管する倉庫内を見学した。オフィス入り口も従業員により厳重に人の出入りが管理されている。そしてオークション会場となるフロアを抜けると、まるで金庫のような重厚なドアがあった。セキュリティを解除し、ロックコードを入力するとこの扉が開かれ、いよいよ倉庫の中へ。TG社では月間十数万台の中古スマホを取り扱う。その在庫がこの倉庫の中で保管されている。仮にこの倉庫内に5万台のスマホが保管されていたとし、1台が3万円で取引されるとすれば、この倉庫内だけで15億円分の在庫が保管されていることになる。だからこそ、このセキュリティの厳重さにも納得がいく。
 取材で訪問したその日は中古スマホの流通量が少ない時期ともあって、倉庫内もかなりガランとした状態だったが、iPhoneのモデルチェンジ後などスマホの買い替えが多くなる時期には、この倉庫内も隙間がなくなるほど端末の入ったダンボールが積み上がるという。

 

写真1

 

写真2

 

2. 目の肥えた買付業者が続々と集まる中古スマホオークション

 その日は午後から数時間の限定でオークションが予定されていた。オークションの開催日時はあらかじめ常連である買付業者に案内されており、時間になると業者が各地からこのオフィスに足を運んでくる。

 オークションといっても、普段はガランとした何も無いフロアの奥に従業員用のデスクと金庫があるだけ。オークション開催時間にあわせ、隣接する倉庫から中古スマホが大量に詰められたダンボールが次々と運び込まれ、何も無かったフロアを埋め尽していく。買付業者が端末の状態を確認しやすいよう、ダンボールは蓋が開けられた状態になっておりこれが床一面に並べられているような状態である。来社した買付業者のほうもプロで、ダンボール内の端末を数個検品するだけで、そのダンボール内の端末のおよそのクオリティを見極め、買付価格を提示していく。Luo氏側と買付業者双方が納得した価格になったところで取引がまとまり、多額の現金が目の前で動いていった。

 取材させていただいた日は中古スマホ流通量が少ない時期であったため、入札形式はとらず、買付業者との個別交渉によって取引価格が決定し、売買されていった。端末流通が多く、また買付業者が多くなると、入札用の投票箱が引っ張り出されてきて、入札形式で売買取引が行われるようだ。

 

写真3

 

写真4

 

 この日の売買は見ている限り手際よく進んでいたが、常連の買付業者によれば、Luo氏をはじめとする
TG社の仕入担当者の目利きは定評があるそうで、日本、米国等から仕入れてきた中古端末のクオリティが常に一定水準にあるので安心して仕入れられるという。香港には同様の中古スマホ流通オークションが多数存在するようだが、一番難しいのは出品されている端末のクオリティのチェックであり、中には粗悪品ばかりを扱うところもあるようだ。

 今回の取材では、取り扱われている中古スマホから個人情報の流出はないかという点にも関心を抱いていた。日本国内で取り扱われている中古スマホは、中古流通業者の手によって完全なデータ消去が施されていることが知られている。単に初期化するだけでなく、業者向け専用のソフトウェアを使ってメモリにランダムな文字列の上書きを繰り返すなどして、悪意のある購入者が記憶領域にアクセスしても過去のユーザーに関わる情報やデータが端末から読み出されないよう処理されているのが基本だ。
 もちろん、個人売買における中古スマホはこの限りではない。日本国内で大手企業が絡むスマホの買取(下取り)についてはこのように安心できるのだが、海外に流出している中古スマホは果たしてきちんとしたデータ消去処理が行われているのか疑問だった。

3. 海外に流れる中古スマホにおいてもJAPANクオリティは健在だった

 TG社にて一部の実機を見せていただいたが、在庫端末は日本国内で流通する中古スマホと同等に完全に初期化されているということだった。日本から輸入される中古スマホに関しては、日本から出荷される時点で日本の流通業者によって、完全にデータ消去された上で海外に出荷されているということである。また、求めれば1台1台のデータ消去証明の取得も可能であると聞いた。したがって日本の過去のユーザーの情報が中古スマホから流出することはまず考えられないという。また日本の流通業者経由の仕入れ端末は、機種、カラー、グレード、さらに端末の傷や状態などの程度別にきちんと仕分けられた状態で仕入れられているという。
 こうした中古スマホの品質管理においては日本が他国に比べ抜きん出て厳格に管理されているそうで、世界の中古スマホ市場において日本からの出荷品が人気が高いというのはこうした背景もあるようだ。

 他方で、韓国から仕入れた中古スマホは過去のユーザーのデータが消去もされない状態で出荷されているものが、かつては少なくなかったという。これが中国に渡り、端末内に残った個人情報が収集され、メールアドレスや電話番号などの情報が流出し韓国内で問題となる事態も起こった。こうしたトラブルを受け、現在韓国政府が介入し、中古スマホの取り扱いや、それら端末内にある個人情報をめぐる対策について法制化の動きが出ているということだ。
 わが国においては個人情報保護法以外に、中古スマホのデータ管理に関わる特別な法律こそ存在しないが、中古スマホ買取業者、流通業者による自主的な管理によって責任持って過去のユーザーの情報を消去した上で海外に出荷されているということが香港市場を取材することで知ることができた。

 わが国から中古スマホが海外に流出しているというと、もっと「グレーな世界」を想像していた。しかし実際にはかなり状況が違っていて、日本から出荷された中古スマホは品質管理がしっかりとなされ販売されているということに安心させられた。海外に流れる中古スマホにおいても、JAPANクオリティは健在で、しかも世界の買付業者からも高い評価を得ているのである。
 こうしてわが国から出荷された中古スマホはTG社のような香港の買付業者を経由し、フィリピンや
ベトナム、その他アジア各国やドバイ、さらに香港のバイヤーを経由して中国(深セン)へと流通していくという。

4. iPhoneは中古スマホの中で圧倒的に高値安定の「動産」

 中古スマホとして流通している端末の大半はiPhoneやiPadなどのアップル社製品が占めていた。iPhone以外にも、サムスンのGALAXYシリーズは世界中にそれなりの修理体制を持っていることもあり、iPhoneと共に中古スマホ流通ルートに乗って売買されていた。ただしiPhoneほど人気が高いわけではなく中古流通数もそれほど多くはなかった。またソニー(Xperia)や台湾HTCの端末もそこそこ見かけたが、もはやそれ以外の端末メーカーはTG社のような中古買付業者での取引でほとんど見つけることができなかった。

 近年は小米(シャオミ)など、中華系のメーカーが高品質ながらも低価格のスマホを次々に発表し、世界の市場で存在感を示していると言われているが、そもそも新品での販売価格が「安価」となれば、中古となった場合には商品価値が無くなってしまう。従って中古スマホ流通ルートの中では、こうしたメーカーの製品はほとんど見かけることがない。
 一方でiPhoneは中古となっても一定の価値を持つ「動産」として取引されているということを痛切に感じた。iPhoneはモデルチェンジが1年に1度とモデルサイクルが長いことと、元来の定価が高価で、かつ世界中でほぼ同一価格で販売されているため、中古として流通させる際にもリセールバリューが実に高い。他方でAndroid端末は世界の様々なメーカーが製造販売しているものの製品数が多く、また型落ちになるのも早いため、新品であっても販売価格競争で安価になってしまう。このため中古スマホ市場におけるリセールバリューは無いに等しく、中古流通業者間でも人気がないという。
 中古流通業者においても利益を確保しなくてはビジネスにならないので、中古スマホの中でも“価値ある動産”ともいえるiPhoneが取扱い製品の中心にならざるを得ないということだ。

 

 次回はLuo氏と共に中国・深センに移動し、TG社の顧客である買付業者へのインタビューを中心に中国の中古スマホ販売事情をルポしたい。

※PDFデータはこちら

——————————————–

 

写真9

 1967年、東京都生まれ。黎明期からの携帯電話業界動向をウォッチし、2000年に(株)アスキーにて携帯電話情報サイト『携帯24』を立ち上げ同Web編集長。コンテンツ業界を経て2004年独立。2007年、「携帯電話の遠隔医療応用に関する研究」に携わり徳島大学大学院工学研究科を修了、博士(工学)。スマートフォンの医療・ヘルスケア分野への応用をはじめ、ICTの地域社会での活用に関わる研究に従事。モバイル学会理事/副会長、ITヘルスケア学会理事。近著に『メディア技術史』(共著、北樹出版)など。1000台を超えるケータイのコレクションも保有している。

 

<オークネット総合研究所 概要>
 当総合研究所は、1985年に世界初の中古車TVオークション事業をスタートし、以来30年にわたりオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営。これまで培った実績とネットワークを活用し、専門性、信頼性の高い情報を発信することで、更なる業界発展に寄与することを目指しています。

所在地:〒107‐8349東京都港区北青山二丁目5番8号 青山OMスクエア
代表理事:山内 良信
U R L:http://www.aucnet.co.jp/aucnet-reseach/

——————————————–

<本件に関するお問合せ>
株式会社オークネット 広報担当:降旗(フリハタ)
TEL:03-6440-2530  E-MAIL:request@ns.aucnet.co.jp

※本資料を利用される際は、オークネットにご一報の上、提供元を「オークネット総合研究所」と明記して、ご利用ください。



ニュース一覧へ