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オークネット総研ニュースレター配信
~中古デジタル機器流通市場の実態を探る~
第1回:新連載記念特別インタビュー ── ウェアラブルデバイスの最新動向

2020年11月20日

 オークネット総合研究所(所在地:東京都港区/理事長:佐藤 俊司/URL:https://www.aucnet.co.jp/aucnet-reseach/)は、BtoBネットオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営し、独自の調査レポートなどを発表しています。当レポートは昨今注目される中古市場に関し、モバイル研究家・木暮祐一氏に取材・調査を依頼し、ニュースレターとして不定期で配信しているものです。
 このたび新連載としてデジタル分野全般の流通動向に着目した「~中古デジタル機器流通市場の実態を探る~」をスタートさせることとなりました。第1回は連載開始の記念企画としまして、ウェアラブルデバイス界でご著名な神戸大学大学院教授・塚本昌彦先生にインタビュー取材をさせていただき、対談形式でウェアラブルデバイスの最新動向についてお届けいたします。

 携帯電話が進化していく過程で、1999年にはインターネット接続機能が搭載され、さらに2001年にはアプリが動作する環境もでき、携帯電話そのものがコンピュータになっていく、そしてそれによりウェアラブルコンピューティングが常態化していくとして未来を展望してきました。一方で、コンピュータ側の視点から、コンピュータが小型化し、それを身に着けるウェアラブルコンピューティングという世界観もありました。後者の視点でウェアラブルコンピューティングのあり方を自ら長年にわたって実践されてこられたのがこのたびお話を伺った神戸大学大学院教授の塚本昌彦先生です。

1. わが国のウェアラブルについて20年の振り返り

木暮:塚本先生のこれまでのご略歴とお取り組みについてお教えください。
塚本:京都大学を卒業後、1989年~1995年までシャープに在籍し、天理の研究所で通信システムの研究開発に携わりました。通信プロトコルの研究、特にOSIという通信国際標準の研究開発をしていました。また、携帯端末の走りでもあるシャープのザウルスの開発にも携わり、赤外線通信の部分を担当していました。1995年から大阪大学で教員となり、モバイル・ウェアラブル・ユビキタスをめぐる通信に関して研究を行いました。所属していた研究室がデータベースの研究室だったので、それらを組み合わせて様々なシステムの研究をしてきました。2004からは神戸大学に移り、ウェアラブル・ユビキタスを軸にして現在に至ります。その間、2001年からはHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の実践生活に自ら取組み、毎日外出するときはHMDを着けて生活するということを始めて、もう20年近くになります。2004年にはウェアラブルのNPO(ウェアラブルコンピュータ研究開発機構)を立ち上げて、産業界の人たちとウェアラブル推進をやっています。2016年からはユーザー会というNPO(日本ウェアラブルデバイスユーザー会)も立ち上げ、ウェアラブルの利用促進に努めています。


 (プロフィール)1987年3月京都大学工学部数理工学科卒業、1989年3月京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻修士課程修了、1989年4月シャープ株式会社入社、1995年3月大阪大学工学部情報システム工学科講師、1996年10月大阪大学工学部情報システム工学科助教授、2002年4月大阪大学大学院情報科学研究科助教授、2004年10月神戸大学工学部電気電子工学科教授、2007年4月神戸大学大学院工学研究科教授(電気電子工学専攻)現在に至る。ウェアラブルコンピューティング、ユビキタスコンピューティングのシステム、インターフェイス、応用などに関する研究を行っている。応用分野としては特に、エンターテインメント、健康、エコをターゲットにしている。 2001年3月よりHMDおよびウェアラブルコンピュータの装着生活を行っている。

木暮:塚本先生がなぜウェアラブルにはまっていらっしゃるのでしょうか。
塚本:ウェアラブルというのはもう自然な形です。コンピュータが1950年に生まれて、そこから大きなものがどんどん小さくなり、使い方がどんどん変わっていきました。それで、モバイルの次はウェアラブル・ユビキタスであろうと考えました。ユビキタスというのはもう死語になってしまっていて、多分IoTの方が一般的かと思います。小さなコンピュータを人やモノ、場所に埋め込んで生活の中で使っていく方向性は、20~30年前からありました。ウェアラブルに関してはだいぶ読み間違いがありました。2001年にウェアラブルを身に着け始めた時点から、いやもうちょっと前からだと思うのですが、HMDっていうのは世の中にあっという間に浸透して、1年後にはみんな街の中で着けている、と言い続けてきたのですが、そこからすでに20年も経ってしまいました。
木暮:ウェアラブルを2001年から身に着けていらっしゃるんですね。かなり以前に霞が関などで塚本先生とすれ違ったことがありますが、HMDを着けていらっしゃったのですぐにわかりました。
塚本:すごい目立つ奴でした(笑)。石原元都知事の選挙の時に、警察官に職務質問されました。選挙活動の前を通ると大変…(笑)。もともと、ウェアラブルというのは目立つ変な姿でした。コンピュータが大きかったからね。
木暮:ウェアラブルがユーザーにどのように受け入れられてきたか。先生が最初始められたころは、まさに目立つ変な姿だったのですね。
塚本:変な姿でした。私はそれをファッションだと思っていました。変な姿であっても使うことでみんなが使い方を理解して、社会が受け入れたら新しいファッションとなるのではないかと。
木暮:塚本先生は昔からビジュアル系でカッコよかったです。私ら側はいわゆる秋葉原、アキバオタク系なんで。その人たちが着けていたら、ただのオタクにしか見えない。
塚本:時代だったのかもしれません。当時、ガングロやヤマンバの流行もあり、変なファッションが急に流行るっていうのは、もしかしたら慣れなのかもしれません。だから当初私はウェアラブルというのは目立つことを逆手にとって社会に広まると思ったのですが…。
木暮:そういう点で、それまでに無かったものをいきなり世に出して当たり前に普及させるAppleってすごい会社だなと思います。iPhone、スマートフォンを当たり前にさせたのは、Appleですし。ウェアラブルデバイスも、やはり最初はそれほど関心を持たれていなかったのに、Apple Watchが出てから多くの人が使うようになったじゃないですか。
塚本:AppleがApple Glassを作るのではという噂が聞こえてきます。普通の眼鏡に見えるものという噂なのですが、Appleらしくカッコいい眼鏡になると思います。
木暮:そういえばかつてのGoogle Glassも結構いけていたかなと思います。
塚本:Google Glassは私もすごくいいと思います。Google Glassは小さくて高性能なところがすごくいいと思いました。ただやはりいろいろ問題があって、とくに大きかったのがカメラですね。
木暮:カメラは賛否両論ありました。
塚本:カメラが皆に嫌われる。それで着けている人が減っていって…。そういうところで社会受容性が問われたそうです。それはGoogle Glassによる業界の流れ、歴史といえますね。
木暮:私もかつて使っていました。いろいろHMDを体験した中で、Google Glassだけはすれ違う人が振返りませんでした。意外に受け入れられたんじゃないかなと思っていたのですが、カメラがついているとわかると皆さんぎょっとするという…。
塚本:やはり、見た目ですね。
木暮:でもこれまで塚本先生が装着されてきたものに比べると、すごいシンプルですね。
塚本:Google Glassは10万円以上しましたが、4~5万円くらいで売り出されれば、ブレイクすると思っていました。だけど2015年に一旦やめてしまいました。産業用で続いていたことが、2017年にわかるのですが。もともとGoogle Glassを一生懸命やりだしたのは、創業者の一人のセルゲイ・ブリンさんなんです。ブリンさんは、そんなに目立ちたがり屋ではないのだけれども、科学技術の夢で新しいことをやっていく、というのが好きな人で、彼が推進していたそうです。今はもう引退され、Googleはサンダー・ピチャイさんが継いでやっていますが、ピチャイさんはどちらかというと協調的な社会、他の人たちと仲良くしていくような人で、社会受容性がないのは多分嫌いなのだと思います。今は、アンビエントコンピューティングと言って、端末はなるべく目立たない。勝手にコンピュータが環境の中で、人々をサポートしてくれるというのを言っているのは、ピチャイさんの性格によるものじゃないかなと思います。
木暮:もしかしたらまたAppleがやりかねないですね。Appleが作ると一般ユーザーに広がるので、それと同時にGoogleも再び出してくるというような…。
塚本:Appleも、普通の眼鏡に見えるARグラスというのを作って、それがもしかしたら今年末に…。今年11月のAppleイベントではMacBookかAppleシリコンが出るかもしれない。ワンモアシングのサプライズで、グラスが出てくる可能性もあるかも。発売は多分来年か再来年くらいだと思いますけどね。どこ(の企業)も普通の眼鏡にARグラスの方向に向いているように思います。ただこの業界で一番乗りしているマイクロソフトは、ごついやつです。ごつくて高性能な、ARグラスです。高性能なARグラスか、普通に見えるARグラスか、というところで、二つの大きな方向性があるように今感じています。従来からある単眼のちょっと目立つものは、業務用では使われるけれども、民生用では結局出てこないのかな。私はそれが出てくるのをずっと夢見ていたのですけれども、ちょっと抵抗があるのかな…。
木暮:Google Glassを体験したときに、これを使って生体情報の計測をやりたいと思っていました。身体に密着して利用するというところに大きな可能性を感じていました。腕時計型よりも確実に密着しています。これを使ってヘルスケア分野に活用したい。
塚本:生体情報も含め、ヒトの情報の入出力は、かなりのものが眼鏡周りに集中していますからね。 木暮:もしかしたら眼鏡はそういうところで、これから広がりがあると思っています。次の本命のウェアラブルは眼鏡型ですね。これまで紆余曲折ありましたが、次こそ眼鏡型が来る!と。

2. ウェアラブルをどう活用していくか

木暮:塚本先生がウェアラブルを身に着けられ始めた頃のご講演で、その活用のイメージをお話しされていたと思うのですが、一例としてウェアラブルで1日をずっと録画して、家に帰ったら奥さんと一緒に「今日はこんなことがあったんだよ」というデータをHMDで共有する、みたいなお話を伺ったことがありました。
塚本:そうそう、それこそ今のスマホと一緒です。こういう機器というのは、より生活の中に入り込んでいくと考えていました。生活の中に入り込むと、しょうもないことに見えるような生活の些細なことにコンピュータを活用するようになるはずです。実際にその時代がやってきていますよ。今やそれこそスマホですよね。
木暮:先生の話は先を行き過ぎていて、その未来のお話が、気が付けばみんなスマホで実現させているといる感じですね。
塚本:そうなんです。私はそれが20年前はウェアラブルで…、今のスマホみたいに、「これなしでは生きていけない世界」が来るというのを思い描いてきたのです。モバイルが勢いをつけ、それがスマホという形になって、もう肌身離さずみんな手に持っているという時代になりました。
木暮:みんな写真撮ったり動画撮影したりして記録して…。
塚本:こっち(ウェアラブル)だったら手で持たなくてもいいのにね(笑)。
木暮:手で持たなくよいというウェアラブルは、スポーツ分野での活用から浸透しましたね。
塚本:活動量を計測するところからですね。私は実世界ファーストで、ここ数十年どこにでも足を運んで実世界に触れることを率先してきましたが、コロナの影響でガラっと変わりました。もう巣ごもり半年になってしまって…。
木暮:巣ごもり半年ですか。ウェアラブルをあまり使えなくて面白くないですよね。
塚本:そうそう。でも着けていますよ、家でも。1日の活動量を見みるのに。今まで1日1万歩とか歩いていましたけど、ここ半年は多くて3000歩。少なくて200歩とか…(笑)。
木暮:ほんと最近は歩かなくなりましたよね。


塚本:ウォッチもたくさん着けています。腕にApple Watchが3つで、このヘッドバンドにもApple Watch着けているんですけ(笑)。
木暮:頭にもApple Watchを着けてらっしゃる?
塚本:Apple Wach 2個と、ひとつはFitbit(フィットビット)です。Watchは鏡で見返して操作できるようになっていて心拍数とか計れるんです。


https://ho-lo.jp/products/hardware/holostar/


塚本:今回発売されたApple Watch Series 6ではSpO2(酸素飽和度)を計れます。頭での計測と腕での計測で値がどう違うのかも調べています。SpO2もそうですし、1日の活動量やエクササイズみたいのものも含め頭と腕でどのくらい違うのかなと、そういうのを計ろうとしています。今のところもう、半年近く両方に装着してやっていますけど、大体もう腕の方が頭の2割減です。
木暮:2割減…。
塚本:水泳とかだったら全然ダメかもしれません。腕の動きを取っているでしょうから…。
木暮:頭の方が全然正確に取れると。
塚本:そうですね。専用のアルゴリズム使えば、腕もエクササイズによっては正確に取れるかもしれません。ただ腹筋の回数とかは、腕だとあてにならないところがあるような気がして。腕を前にやるとかでは、多分カウントできないですね。それと、私は今、血糖値の計測にも関心を持ってます。
木暮:血糖値はどうやってとるのですか。
塚本:ひとつは、実際にペタッとつけられて、伸縮式で温泉にも入れるセンサー(Abbott社のFreeStyle Libre、https://www.myfreestyle.jp/)の活用です。医療機器なのですが、血糖値を直接とっているのではなくて間質液のグルコース値をとっているため、血糖値より5~10分遅れくらいで出てくるんです。それでも結構、いいみたいです。
木暮:食べ物も何から食べるとゆっくり血糖値が上昇するとか、そういうのを見える化してみたいです。それはダイエットにつなげられるはずなので、ビジネスになりますよ。
塚本:とてもわかります。糖尿病の人って、1日4回くらい採血する人もいますよね。あれが苦痛でたまらない、すごいストレスだといる人もいるそうです。だからそっち(ペタッと貼れるセンサー)をつけると、すごくいいみたいです。特にⅠ型糖尿病の人は、保険適用もあるので、だいぶ安くなるみたいです。Ⅱ型糖尿病の人は自己負担ですが、そのセンサーが7,000円くらいで2週間使い捨て。月15,000円くらいですが、指に刺して採血するよりはいいと思います。
木暮:それやってみたいなぁ、自分で。

塚本:私は今プロジェクトで、マラソンやジョギングで様々な値とっていて、血糖値やSpO2もとろうとしています。今回Apple Watchでとれるかなと思ったんですけど、Apple WatchはSpO2の値があまり正確ではなくて、医療機器の認可もとれていないので、他のものを検討しています。
木暮:ソフトウェアの改善もされていきそうですけどね。
塚本:そうですね。そもそもこのような(ウェアラブルデバイスを着けた)状態で血糖値をとるっていうのがあまり正確ではなくて、今の医療機器の基準だとダメだと思います。しかしそうではない、血糖値もSpO2も生活レベルで常時計測するということに対して、別の基準が必要なのではないかって思います。
従来の医療機器の基準ではなくて、家庭用の新規のジャンルを作ったみたいです。そういうのをどんどん立ち上げてったらいいのではないか。
木暮:とても同意します。

3. 世界のウェアラブル動向と日本メーカー

木暮:ウェアラブルはもうグローバルな商品ですよね。
塚本:新型コロナウイルスの早期発見という観点からいろいろなプロジェクトが立ち上がっていて、ウォッチとかリングとかを使って、SpO2を計るのが一番わかりやすいのだそうです。
木暮:今一番話題ですね。
塚本:だけど、Oura Ring(オーラリング)というアメリカのベンチャーで指輪型デバイスを出している企業ではSpO2をやっていなくて、加速度と心拍数と体温かな、それくらいの要素だけでユーザーの寝ている間のデータをみて、発症する3日前で95%の精度でコロナを発見できたそうです。それは実験環境だと思うので、一般環境とはちょっと違うかもしれないのですけれども。コロナの早期発見に関しては、ウェアラブル界隈はもうすごい競争です。
木暮:コロナ以外に一般のビジネス界隈ではどうでしょうか。


塚本:遠隔作業支援も、HMD、スマートグラスを使った遠隔作業支援などの分野で活用が進んでいます。現場にいる人が、遠隔地にいるプロに作業を教えてもらうといったものです。保守点検などの専門的な作業を現場でやるときに、今まではきちんととできる人が行っていたのですが、今はコロナでできないので、遠隔からzoomを使って指示し、HMDに図面や指示が出てくるというイメージです。そうした分野でスマートグラスは使い勝手がよいみたいです。
木暮:グローバルで見たときに、ウェアラブルが進んでいる国あるいは、ウェアラブルの開発メーカーが多い国というのはあるのですか。
塚本:ヨーロッパが進んでいます。おそらく、インダストリー4.0とかが関係しているのかもしれません。補助金などを活用しているのでしょう。保守点検とかの分野で数百台~千台レベルの発注があるという話も聞いていますので、規模の大きな使われ方もあるみたいです。国内ではウェアラブルの活用が徐々に出てきているようです。大手の企業で数百台規模の(ウェアラブルを)導入するというところが出てきている、という話を聞くようになってきました。
木暮:まだ業務用、B to B向けというところなのでしょうか。
塚本:ええ、そうです。それ以外だと中国があります。中国では、両眼で画面をみる端末がコンシューマ向けに売れているそうです。コロナで外出できず、寝っ転がって動画を観るような使い方なのでしょうけど。
木暮:中国もすごい消費国なのですね。
塚本:だから意外と売れているそうです。
木暮:日本もまだチャンスあるんですか。
塚本:日本企業でスマートグラスやっているところは結構ありますが、国内でうまくいっているのはマイクロソフトやVUZIX、リアルウェアなどの米国企業ですね。日本企業の一部はコロナで業務がストップしていて、やっていないところが多いみたいで、危険を冒してまで営業活動をやっていないと。スマートグラスのニーズは非常にあるのに、よく売れるポテンシャルはあったのに。コロナだからと全部自粛している、というところはもう全然だと言っています。両極端ですね。
木暮:日本のメーカーや流通網にももっと頑張ってもらいたいですね。日本企業にポテンシャルはないのでしょうか?
塚本:ウェアラブルがきっと来ると言い続けてもう20年以上、しかしそれが実現せず私が20年外し続けたというのは、私が間違っていたわけではなく日本企業の見誤りが要因かと思います。日本企業はモバイル分野ではすごく先行してきて、1980~90年代に新しい商品をたくさん出していました。電子手帳とかゲーム機とか、ゲームボーイ、たまごっち、デジカメもそうです。日本がリードしてそのような新しい製品を作りましたが、結局全部スマホに集約されてしまったのです。Appleに全部持っていかれたという感がありますね。モバイルを立ち上げたのは日本だと思っていますが、残念なことに今は日本企業の元気がなくなってしまいました。日本は本来、小さい製品が得意なはずなのに…。
木暮:確かに1990年代~2000年代半ばくらいまでは携帯電話の進化も素晴らしかったと思います。
塚本:そう、日本社会のマインドがちょっとネガティブになってしまって、そこから20年。
木暮:私は携帯電話からこの世界に入って、端末をコレクションして、またいっぱい身に着けてきました。それがまさかコンピュータになるとは思っていませんでした。塚本先生と目指していた世界は近かったのですが、別のハードからウェアラブルの世界に入った感じです。
塚本:携帯電話も日本は先進的でした。iモードなどですね。
木暮:先生がじゃらじゃらとウェアラブルを身に着けていたのと同じように、私も携帯電話をたくさん腰につけていました。あの頃の日本の端末メーカーが成功したのは、回線契約と紐づいていたため結構安く販売できたたからです。いわゆる護送船団方式と呼ばれていて、日本はそれでモバイル業界が大いに賑わいました。ただそのやり方をやりすぎているといつか加入者数が飽和したときに、世界に追い越されるということは指摘してきました。
塚本:私は見方がちょっと違います。携帯電話を主人公にみるとそう見えるかもしれないけれど、やはり日本はたまごっちなどのガジェット系が抜きんでていたと思います。パワフルなアクティブマインドが全体にあったと思います。
木暮:ユーザーも好きだったのかもしれませんね。
塚本:電子手帳もインフラに依存していないじゃないですか、通信環境には。デジカメもそうですが、そういうものでモバイル機器はありました。それがここ20年なくなったのはやはりマインド、このデフレとともに、産業のマインドが下がってしまって、ネガティブマインド、ネガティブ思考になってしまった。「変なもの出して失敗したらダメだ」というような会社の空気ができて、「失敗したら会社の中で落ちて行ってしまう」みたいな、マインドの話じゃないかと思います。もちろん、携帯業界からのビジネス構造の問題もあるかもしれないですけど、もっと大きなところに問題がありそうです。
木暮:成功しすぎたのでね。
塚本:大きな社会問題、ネガティブループが回っているというのが、この20年じゃないかなと思います。日本も何十年も前はすごい前向きでした。
木暮:精一杯開発に燃えてましたね。
塚本:そこそこ失敗しても許される世界だったと思います。

4. ウェアラブルの中古端末流通の可能性

木暮:ところで、ウェアラブルデバイスの流通が拡がっていくと、今後中古端末流通っていうのはビジネスチャンスが期待できるのでしょうか?
塚本:これまで全然考えたことはありませんでした。あまりありそうにない世界だと感じていましたが、今回のインタビューをきっかけによくよく考えてみたら、十分あり得ると感じています。まず、状態のよい中古端末がたくさん眠っているような気がします。これは一般コンシューマ向けの話で、売買というニーズはありそうです。ビジネス向けでは、マイクロソフトのHoloLens(ホロレンズ)が注目されている一方で価格が高いのがネック。最新のHoloLens 2は税込みで422,180円するのですが、「初期モデルでもいいから安価に大量に欲しい」というニーズが多いです。業務用で使いたいけれども値段が高いから100台導入はできない、というような企業が結構ありますよ。
木暮:地方の観光分野でもHoloLensは使えそうですね。
塚本:あとイベントですね。イベント等で大量に使いたいというところはあります。これは短期利用だから、レンタルでもいいかもしれません。
逆に、モノによっては古い機種は性能が全然ダメな場合もあります。特に遠隔作業支援は古い機種やっても全然ダメです。スマートグラスでも3年くらい前のものですとCPUがダメなので。遅延が大きいです、昔のものは。質が悪い、遅延が大きいとか。もうこれは何年くらい前かな。10年近く前に同じようなアプリを作った企業があって、そこはHMDを使ったんですけれども、遅延が10秒くらいで絶対使えないと。CPUがよっぽどよくないと。

木暮:モデルチェンジって、ものすごい進化があるじゃないですか。
塚本:ええ、今のものでしたらね。いいものを使えばすごくストレスなく使えると思います。パソコンやスマホでzoom使っていても、そんなに遅延気になることはないと思います。パソコンとかスマホもCPU相当いいですからね。
木暮:そうですね。逆に言うと今落ち着いちゃってるじゃないですか、パソコンとかスマホって。iPhoneがモデルチェンジしても「2世代前くらいだったら十分使える」という感じがします。
塚本:そうですね。
木暮:ウェアラブルはまだ試行錯誤なので、モデルチェンジで劇的に進化を遂げます。だから「もう2世代前なんか使えないよ」となってしまうんでしょうね。そうなるとやはり中古流通は厳しい…。
塚本:そもそも、ウェアラブルのCPUというのが、スマホの2世代前とか使っていることが多かったのです。それはウェアラブルの方が性能は低くていいだろうと。その代わり、ちょっと安くて、使いやすいものをと。バッテリーやコネクターが傷んでいる場合があるので、これはスマホでも同じですが、信頼ある売り手がきちんとチェック・整備できるなら十分成り立つのかもと思います。
木暮:ウェアラブルはやっぱり傷みやすいですよね。スマホとかに比べるとやっぱり…。
塚本:そうそう。
木暮:身に着けているからこそ、どこかにぶつけたりとか。
塚本:ええ。

木暮:例えばiPhoneだと、リファービッシュ、再生するという流れがあります。要は外側だけ新品にして再出荷したりしてるわけです。それをApple自らもやっていたり、サードパーティがやってたりするんですけれども。Apple Watchも、筐体だけ、外側だけ交換したものをAppleが流通させる可能性もあるのかなと思います。
塚本:装飾品ですと見た目大事ですからね。
木暮:中国へ行くと、何から全部サードパーティで完璧なエクレセントがあります。
塚本:バッテリーもですよね。バッテリーも新しくなった方が。

塚本:使い方によっては、もうApple Watchのワン(Series 1)でも、いいんじゃないですか。時計見て、ちょっと通知を見るというくらいだったら。古いものでもそんなに問題にならないと思います。グラスも、遠隔作業支援では性能が必要なんですけれども、使い方、考え方の部分で古いやつでもいいんじゃないかなと、思いますね。特にApple Watchは、カバーもいっぱいありますからね。ジュエリーのついたカバーとか。ベルトもいろいろあるし。

5. ウェアラブルのキラーコンテンツは?

木暮:一般ユーザーに広がってくるために、何かブレイクスルーポイント等ありますか。
塚本:ウォッチですか?
木暮:ウォッチはもう十分広がっていますよね。
塚本:いやいや。ウォッチは、世界と比べると日本は、やっぱりなかなか立ち上がりにくいですね。
木暮:日本がやっぱり世界から遅れていますか。
塚本:遅れている。Apple Watchは、アメリカ人とか結構着けている人多いでしょ、ビジネスの現場とかで。日本人はまだ割と少ないですよね。
木暮:もう少し新しい側面を見つけていかないとだめですね、日本も。
塚本:あとはスリープテックですね。寝ている間っていうのは全然我々の知らない世界ですからね。こうしたところを可視化すると、睡眠の質の改善とかできるのでは。
木暮:究極は夢の録画ができたら最高ですよね。怖くて見られないけど。
塚本:それだったら、夢のコントロールができたら…。
木暮:そうそう、いいですね。やっぱり研究開発しましょう、先生。


塚本:ウォッチはやはり、Apple Watchが一番主導権を握っていると思いますが、それ以外も割とよく売れています。ファーウェイもすごい台数です。
木暮:ヨドバシカメラとか行くと、コーナーがありますもんね。
塚本:そうです。あとはやはり、B to B。Apple以外のウォッチは、電池が2週間以上持つものも多いです。Apple Watchが2週間くらい持つようになったら…、もっと広い分野で使われるはずです。日本人は割とみんな、Apple Watch中心に広がっていくっていう感じがします。そのきっかけとなりそうなのが来年ではないかと。Apple Watch Series 7が一応サイクルとしては、モデルチェンジのタイミングで、もしかしたらマイクロLEDが搭載されるかもしれません。マイクロLEDになると、消費電力をだいぶ下げることができます。見栄えが変わって消費電力も減って、電池が2週間持つようになると、日本でも広がる大きなきっかけになるかもしれません。
それと、iPhone 12では対応が見送られてしまいましたが、Appleが忘れ物防止タグ「AirTag」を開発しているという噂があります。私は今、AppleではないですけれどもTileという商品を家で使っています。テレビやエアコンのリモコンにつけているんです。Bluetoothタグなので、あるかどうかしかわからないのですが、音を鳴らす機能が付いています。それで、スマホからリモコンを鳴らしたり、リモコンからスマホを鳴らすということができてすごく便利です。
AppleのAirTagが出てくるとさらにそれを上回って、何がどこにあるかということが高精度にわかるという意味で、すごい世界が広がるんじゃないかと思っています。それは当然ペットについても大きいと思いますし、それ以外にも子どもに持たせる、自転車や車につけるとか。いろいろなものにタグをつけるっていうのはApple Watchをきっかけに広がるとすると、それと同時にウォッチというのは組み合わせに便利だと思います。さらに、眼鏡。眼鏡でやるとするとタグ情報が見える。使い道は非常にたくさんあると思っています。人がタグをつけて、公開モードで名前を出して、それを眼鏡で見られれば。
木暮:昔からほしかったですね、この人誰だっけとか。
塚本:眼鏡もよく言われています。人の名前がわかればって。それをやる具体的な手段として、AirTagですね。これからおそらくAppleがかなり主導権握っていくような気がしています。Appleの新製品がいくつか出てくると、Apple Watchもグラスも、世の中にウェアラブルが広がってくるのかなと思います。それに対して他社がどう出てくるか。ひとつはGoogleですね。Googleが目立たないグラスを発表するかもしれない。Facebookもですね。AR機能を備えたスマートグラスを来年発売すると言われていますが、ちょっとまだわからない。
木暮:来年はメインテーマを「高齢化社会とウェアラブル」としたシンポジウムでも企画しようかしら。
塚本:ちょうど新しい商品がたくさん出てくるよいタイミングになると思います。それらがどのくらいのポテンシャルを持っているのかっていうのは、よく見極めていく必要があると思います。大きなポテンシャルがあるものがきっと潜んでいると思います。

木暮:塚本先生、大変ありがとうございました。


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 黎明期からの携帯電話業界動向をウォッチし、2000年に(株)アスキーにて携帯電話情報サイト『携帯24』を立ち上げ同Web編集長。コンテンツ業界を経て2004年独立。2007年、「携帯電話の遠隔医療応用に関する研究」に携わり徳島大学大学院工学研究科を修了、博士(工学)。2013年、青森公立大学准教授。スマートフォンの医療・ヘルスケア分野への応用をはじめ、ICTの地域社会での活用に関わる研究に従事。モバイル学会理事/副会長、ITヘルスケア学会理事。近著に『メディア技術史』(共著、北樹出版)など。1000台を超えるケータイのコレクションも保有している。

<オークネット総合研究所 概要>
 当総合研究所は、1985年に世界初の中古車TVオークション事業をスタートし、以来30年にわたりオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営。これまで培った実績とネットワークを活用し、専門性、信頼性の高い情報を発信することで、更なる業界発展に寄与することを目指しています。

所在地:〒107‐8349東京都港区北青山二丁目58号 青山OMスクエア
理事長:佐藤 俊司
U R L:http://www.aucnet.co.jp/aucnet-reseach/

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<本件に関するお問合せ>
株式会社オークネット 総合企画室:高野 清司、久野 文彦、横田 喬輝
TEL:03-6440-2530  E-MAIL:request@ns.aucnet.co.jp

※本資料を利用される際は、オークネットにご一報の上、提供元を「オークネット総合研究所」と明記して、ご利用ください。



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