ニュース・トピックス

ニュース・トピックス 詳細

 

オークネット総研ニュースレター配信
~世界の中古スマートフォン流通市場の実態を探る~
第25回:COVID-19がもたらした国内中古スマートフォン流通市場への影響

2020年7月17日

 オークネット総合研究所(所在地:東京都港区/理事長:佐藤 俊司/URL:https://www.aucnet.co.jp/aucnet-reseach/)は、BtoBネットオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営し、独自の調査レポートなどを発表しています。当レポートは昨今注目される中古スマートフォン市場に関し、モバイル研究家・木暮祐一氏に取材・調査を依頼し、ニュースレターとして不定期で配信しているものです。
 現在、世界で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は社会に様々な影響を与えていますが、中古スマートフォン流通市場にも変化をもたらそうとしています。今回は国内の中古スマートフォン市場への影響について関係各位への取材により明らかにします。

1. COVID-19が中古スマートフォン流通市場に与えた影響

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、世界各国の主要都市で相次いでロックダウン(都市封鎖や移動制限など)が実施され、様々な社会的、経済的影響が引き起こされている。中古スマートフォン(以下、スマホ)流通市場への影響も少なくなく、物流の停滞が見られる一方で、テレワークを推進する上で必要となる通信手段として特需も発生しているようだ。また、外出自粛の影響で消費者はオンラインでの売買にシフトする一方で、店舗営業の存在意義を考えなくてはならない状況にある。

 今回は国内の中古スマホ流通を中心に、COVID-19の流行によってどのような影響がでてきているかを関係各位への取材により明らかにしていきたい。

 取材にご協力いただいたのは、中古スマホを取り扱う事業者の業界団体であるリユースモバイル・ジャパン(以下、RMJ)の代表理事で、スマホのリユース事業を手掛ける株式会社携帯市場 代表取締役・粟津浜一氏、首都圏・関西圏を中心に通信キャリアショップを展開するほかリユース事業も手掛ける日本テレホン株式会社 代表取締役社長・岡田俊哉氏、大阪・日本橋、東京・秋葉原等で買取店や中古スマホ販売店を展開する株式会社イオシス 買取事業統括マネージャー・横山直矢氏の各位。


 国内外におけるCOVID-19の流行によって、中古スマホのサプライチェーンにどのような影響がでているのだろうか。中古スマホをめぐるサプライチェーンはこれまで当レポートにおいて様々な角度から取材し報告してきたが、その流れは大きく次の4つがある。

(1)通信キャリアショップでの端末下取り~端末は海外に流通
(2)買取店での端末買取り~端末は国内に流通
(3)買取店での端末買取り~端末は海外に流通
(4)海外から中古端末を仕入れ~国内に流通

 RMJの代表理事として中古スマホ流通業界全般を見ている粟津浜一氏によれば、
「COVID-19の影響で店舗自体が休業していたり、営業時間を短縮したりした影響で、ユーザーはオンラインによる下取り、買取りの利用にシフトしている。新品スマホの購入もオンライン販売を利用するユーザーが増えており、不要となる端末を処分する際にも宅配買取などを利用するケースが増加している。このため4つの流れのうち(1)は減少、 (2)に関してはオンラインにシフトしつつ維持している状況である。物流という観点から見ると、COVID-19の感染拡大は国境を越える物流に甚大な影響を与えており、とくに海外物流ルートがほとんどストップしてしまっている状況にある。現在、回復に向かってはいるが(1)や(3)の流通はかなり影響が出ていると考えられる」という。

 わが国では史上初めて緊急事態宣言が発出される事態となり、これにより在宅勤務などテレワークが推奨されたことで、通信手段としてのモバイルWiFiルーターや、中古PC、タブレット、2台目3台目のスマホなどの需要が高まっている一方で端末等の供給が間に合わず品薄という状況である。このため、 「(4)の海外からの中古端末の仕入れによる国内販売というルートは好調とされているが、物流がうまく動かないために入荷がしにくい」(粟津氏)
という。中古スマホ販売に携わる企業からは、(1)の通信キャリアから海外に流れていくルートを国内に仕向けられないかという声も多く聞かれる。

 日本テレホンの岡田俊哉氏も、ユーザーのオンライン購入志向の加速を指摘する。
「消費者心理として、短期間のうちに同じ購入体験を重ねると、その経験蓄積により心理的な不安要素が薄らぎ、安心して購入意思決定ができるようになる。例えば、飲食店が新規出店やリニューアル改装時にクーポン券を1枚ではなく3~5枚綴りで配布する販促企画を目にすることがあるが、これも短期間に3回の食事利用を体験すると固定客化しやすくなる心理変化を狙った販促手法である。約2カ月にわたる外出自粛は多くの人たちに対してオンライン購入の利用頻度を高めることになったが、中古スマホ端末等の購入手段の選択肢としてもオンライン購入に不安感なく手が伸ばせるようになった。その利便性を一度経験したユーザーは、次回以降もオンライン購入で済ませるようになるユーザー層が一定割合増えることは間違いない」

 全員が店頭に足を運ぶ従前からの店舗での購入に戻ることは無く、新たな購入体験がオンライン購入志向にシフトさせていくことは必然であり、COVID-19後の社会では確実に購買行動が変化していくはずである。

2. 緊急事態宣言がもたらした中古端末流通における仕入れと販売への影響

 まず国内における中古スマホ端末の仕入れに関してどのような変化が起きているのだろうか。やはり緊急事態宣言下で各企業においてテレワークが迫られたり、休業せざるを得ない状況となったことは、中古スマホ流通業界にも大きな影響をもたらしている。

 イオシスでは、大阪・日本橋や東京・秋葉原で買取店や中古スマホ販売店を展開するほか、オンラインでの買取、販売にも力を入れている。また法人からの一括買取なども行っている。同社・横山直矢氏によれば、
「当社の仕入れ元は取引先法人企業と一般消費者の両方である。法人企業からの仕入れの場合、緊急事態宣言下は取引企業が休業ないしテレワークに移行したことで、仕入件数、問合せ件数ともに減少傾向だった。一般消費者からの店頭買取も、緊急事態宣言下で来店数が大幅減少した。一方で宅配買取が増加した。緊急事態宣言が解除されてからは店頭への来客数が戻りつつある一方で、宅配買取が引き続き好調で、宅配買取分がそのまま底上げされた形になっている」という。


 日本テレホンは通信キャリアショップも展開し、新品スマホの取り扱いも行っている。岡田俊哉氏によると、
「COVID-19は対面接客を要する業種に大きな影響をもたらした。通信キャリアショップも営業時間短縮に迫られ、来店客数も大きく減少し、結果的に新品スマホ販売の停滞につながっている。新品が売れなければ必然的に中古端末も市場に出てこない。仕入れ対象となる中古スマホ端末が企業や一般消費者から放出されない限り、潤沢な仕入確保ができない」と、中古スマホ端末の市場での流通数不足を指摘している。

 一方で、岡田氏はフリマアプリの普及によるCtoC市場の動向にも着目しており、
「フリマアプリによるCtoC市場がこの2年間で普及浸透してきた。フリマ市場で一般消費者はスマホを含む生活用品の売買経験を積み重ねているが、この2カ月ほどの出品傾向を見ていると、緊急事態宣言下ではテレワークによる時間を活かした断捨離活動によるものなのか、家庭内の埋蔵スマホが多数市場に流通しているようだ」という。ただし岡田氏は、これは一時的な流通増ではないかと見ている。

 海外から中古端末を仕入れるルートは言うまでもなく国際的な物流の影響が出ていることで大幅な調達難に陥っているようだ。粟津氏、岡田氏共に「いまだ回復したとは言い難い状況にある」と声を揃える。

 中古端末の仕入れに関しては一時的な落ち込みが見られた状況の一方で、中古端末の販売の方は需要が高まっている様子である。とくにテレワークによる需要で、PC、タブレット、モバイルWiFiルーターなどが販売増傾向にあるという。

 イオシスでは、中古ノートパソコンの売り上げが前年比300%程度増加しているほか、中古タブレットの販売も好調だという。
「テレワークをするために必要ということで、Webカメラ付きの中古ノートパソコンが好調である。対前年比300%程度の増加がみられる。また、学校の休校に伴うオンライン学習の実施のため、タブレット端末等を家庭で用意する必要があるということで、中古タブレット、とくにiPadのニーズも高まっている。なるべく安価に購入したいということで、中古製品を求められる消費者が多い」(横山氏)

 緊急事態宣言期間中は外出自粛に伴って、販売においても買取と同様にオンラインへのシフトが見られている。その後、緊急事態宣言が解除となって各社とも客足が戻りつつあるという。
「緊急事態宣言期間中は店頭に足を運ぶことが難しいためオンラインでの販売数が急増した。現在は来店者数が戻りつつある」(横山氏)
「来店客数では、繁華街立地ならCOVID-19自粛期間を1とすると東京アラート解除後は1.7倍に回復している。ただしCOVID-19以前の対比ではまだ70%の回復率である。同様に住宅郊外立地ではCOVID-19自粛期間を1とすると1.2倍に回復している。COVID-19以前の対比で90%の回復率である」(岡田氏)

 とはいえ、店舗の立地によって傾向は異なるようである。
「中古スマホ流通市場だけでなく、生活必需品など小売店全般がCOVID-19による経済活動自粛の影響下にあり、中古スマホ端末や中古パソコン関連などは「店頭陳列×店頭購入」は一部マニア層向け立地(秋葉原等)こそ復旧傾向にあるが、一般消費者層向け立地ではCOVID-19の影響を脱していないと感じている」(岡田氏)

 岡田氏はこうした情勢下で、「オンライン陳列×オンライン購入」への消費変化も乗じてビジネススタイルの変化が始まりだしたと見ている。こうした消費変化に対応すべく、日本テレホンではこれまで展開していたオンライン買取・販売サイト「エコたん.JP」に加え、6月5日からはSランク、Aランクの高品質人気中古機種に絞って販売を行う「エコたんプレミアムオンライン」をスタートさせている。


3. COVID-19による消費行動の変化と今後の中古流通業界のあるべき姿

 COVID-19は改めてスマホなどのモバイル端末の重要性を広く社会に認識させることになった。COVID-19の疫病情報はテレビニュースよりもむしろスマホを通じたオンライン情報によって拡散していった。常に持ち歩かれて利用されるモバイル端末という特性を活かして、行動履歴を元にCOVID−19感染者との接触確認を行うサービスが世界で利用されている。あるいは、テレワーク時のコミュニケーション手段としてこれまで以上に重要なライフラインであることを多くの人が認識し、その活用が重宝されたはずだ。携帯電話販売店はライフラインの保護という観点から休業要請の対象とはならなかった。通話、通信が正常に動作するスマホ端末を常に所持しておくことの重要性を多くの人が改めて認識したはずだ。

 法人企業においては業務で利用するモバイル端末に対する価値観の変化が起きている。これまで当たり前だった出勤するという業務スタイルから、急遽在宅勤務化が推奨される社会情勢となり、従業員に貸与する業務用端末の必要台数は急増した。新品供給量では賄えず、法人企業の新たな調達における選択肢として中古端末も受け入れられるようになった。

 なにより、COVID−19は消費者の購買行動を大きく変えようとしている。対面接客しなくてはならない実店舗での購買からオンライン店での購入へとシフトし始めている。実際に、実店舗での営業を縮小し、代わりにオンライン店舗を拡充させる事業者も出てきている。こうしたオンライン店での購入の際に、回線契約を伴う手続きが必要な場合は本人確認書類のアップロードが求められるなど、まだまだユーザーの手を煩わせることは多い。本格的なオンラインへのシフトを進めていく上で、一気通貫でスムーズな契約手続きが進められるよう、本人確認のあり方なども見直しが必要になってくるであろうし、利用者の利便性を向上させる仕組みづくりに様々なビジネスチャンスもありそうだ。


 端末と回線契約の分離が推奨される時代となり、端末だけ購入する消費者が今後増えていくと考えられる。とくにオンライン販売を通じて新品や中古のスマホ端末を購入するようなシチュエーションは一段と高まっていく。そうした中で、とくに端末の品質が個々に異なる中古スマホ端末を買取ったり、購入したりする際には、統一された明確な評価基準が求められてくる。

 実際にオンライン買取を行う事業者からは、買取を行う際にユーザーと買取店との間で端末の品質評価で乖離が生じてトラブルになるケースが少なくないという。逆に中古スマホ端末をオンライン販売で購入するユーザーにとっても同様なケースが生じることもある。「届いた端末が想定していたよりも傷が多かった」というようなケースである。

 こうしたトラブルを解消するために、RMJでは中古スマホ端末の売買の際の評価基準をまとめた「リユースモバイルガイドライン」を公表している。端末の状態を格付けする基準を定め、また店頭およびオンラインでの販売時に示すべき端末品質情報の表示例などを取りまとめている。

 中古スマホ端末を購入する際は、端末の外装の状態だけでなくバッテリーの状態も明確にしていく必要がある。バッテリーを搭載するノートパソコンや家電製品などと同様に、中古スマホ端末においてもバッテリー電源の品質劣化状態を販売時により正しく伝える必要性が高まった。消費者保護の考え方のもと設備拡充や技術スタッフ育成など経営環境に投資できる企業か否か、が中古端末取扱事業者に問われる経営課題となっていくであろう。またCOVID−19感染への懸念もあり、スマホ本体の除菌処理を行った端末か否かの表示を出すことで、購入顧客の安心度を高められるという声も聞く。

 もちろん、すべてが実店舗からオンライン店に移るのではなく、今後は実店舗とオンライン店の役割分担を改めて考える機会にすべきだと、日本テレホンの岡田氏は示唆する。
「通信キャリアショップ(ドコモショップやauショップなど)は、世の中の消費者がオンライン購入志向に変化しても、「故障修理などメンテナンス需要」や「料金見直しによる家庭内通信コスト削減」といった “対面接客説明ニーズ”が底堅く存在しており、むしろ保守窓口を有する通信キャリアショップの存在価値はCOVID−19以前の時代よりもむしろCOVID−19以後の時代の方が高くなると予想している」(岡田氏)

 AIが進化するなどオンラインサービスが拡充したとしても、やはり対面接客による人を介したサービス価値を超えることはない。今後は実店舗の価値をどう考えていくべきか、法人企業や消費者の生活様式の変化を経てもモバイル端末を安心して使い続けられる、市場のサービス価値を見直す時代に突入したといえるだろう。

本リリースのPDFはこちら

——————————————–

 

写真9

 黎明期からの携帯電話業界動向をウォッチし、2000年に(株)アスキーにて携帯電話情報サイト『携帯24』を立ち上げ同Web編集長。コンテンツ業界を経て2004年独立。2007年、「携帯電話の遠隔医療応用に関する研究」に携わり徳島大学大学院工学研究科を修了、博士(工学)。2013年、青森公立大学准教授。スマートフォンの医療・ヘルスケア分野への応用をはじめ、ICTの地域社会での活用に関わる研究に従事。モバイル学会理事/副会長、ITヘルスケア学会理事。近著に『メディア技術史』(共著、北樹出版)など。1000台を超えるケータイのコレクションも保有している。

<オークネット総合研究所 概要>
 当総合研究所は、1985年に世界初の中古車TVオークション事業をスタートし、以来30年にわたりオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営。これまで培った実績とネットワークを活用し、専門性、信頼性の高い情報を発信することで、更なる業界発展に寄与することを目指しています。

所在地:〒107‐8349東京都港区北青山二丁目58号 青山OMスクエア
理事長:佐藤 俊司
U R L:http://www.aucnet.co.jp/aucnet-reseach/

——————————————–

<本件に関するお問合せ>
株式会社オークネット 総合企画室:土屋 貴幸、吉岡 基樹
TEL:03-6440-2530  E-MAIL:request@ns.aucnet.co.jp

※本資料を利用される際は、オークネットにご一報の上、提供元を「オークネット総合研究所」と明記して、ご利用ください。



ニュース一覧へ