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オークネット総研ニュースレター配信  ~世界の中古スマートフォン流通市場の実態を探る~
第23回:分離プラン義務化は中古スマホ流通業界をどう変えるのか

2019年12月20日

 オークネット総合研究所(所在地:東京都港区/理事長:佐藤 俊司/URL:https://www.aucnet.co.jp/aucnet-reseach/)は、BtoBネットオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営し、独自の調査レポートなどを発表しています。当レポートは昨今注目される中古スマートフォン市場に関し、モバイル研究家・木暮 祐一氏に取材・調査を依頼し、ニュースレターとして不定期で配信しているものです。
 いよいよわが国では通信料金と端末代金とを切り分ける「分離プラン」が義務化された改正電気通信事業法が10月から施行され、新たな販売施策がスタートしました。中古スマホを取り扱う業界にどのような変化が訪れたのでしょうか。

1. 改正電気通信事業法が10月1日より施行

 いよいよ10月から、改正電気通信事業法が施行された。とくに注目されているのが、携帯電話料金と端末代金を明確に分離した「分離プラン」の義務化で、いわゆる“2年縛り”の違約金を10分の1の水準にまで引き下げるなどの規制を行った。さらにスマートフォン(以下、スマホ)の値引きも、一部例外を除き2万円が上限となった。

 これまでスマホが「実質0円」などといった極度に安い価格で販売されていた事例が見受けられたが、10月以降は世界に足並みを揃えた常識的な値引きの範囲で販売されるようになった。そこで追い風が期待されているのが中古スマホ流通業界である。新品のスマホが極めて安価に販売されてきたわが国では、新品スマホよりも下手をすれば高価になりかねない中古スマホは市場の大きな拡大が望めなかった。このため、買取・下取りされた中古スマホは日本市場より高価に流通可能な海外市場へ流出せざるを得なかった。しかし、新品のスマホが適正な価格で販売されるようになれば、より安価なスマホを求めてユーザーは中古スマホの購入も視野に入れるのではないかという期待がある。

 では実際に10月以降、スマホの販売にどのような変化が起きているのだろうか。まず、通信キャリアのラインアップに変化が見られてきた。これまで本来であれば高価なハイエンドクラスのスマホが様々な割引施策によって安価に購入できる環境だったため、基本的に端末ラインアップはハイエンドクラスのスマホが中心となっていた。もちろん、ネットワークのポテンシャルを有効に活かせる最新のハイエンドモデルは今後も必要不可欠であり各通信キャリアとも一通りラインアップを充実させている。それに加え、やはり安価に購入可能なミドルレンジやエントリークラスの中・低価格スマホのラインアップも拡充させてきた様子がうかがえる。

 また、回線契約に縛られることなく通信サービスを利用するユーザーも増えることから、端末だけ購入するようなケースが今後は増えていくと考えられる。こうした市場環境の変化を見越して、端末メーカーが独自に量販店等に端末を流通させるケースも増えているようだ。とくに中国系端末メーカーが続々と日本に進出してきており、比較的高性能な端末を安価にラインアップしてきている。じつは今後、中古スマホのライバルとなるのがこうした中・低価格帯の新品スマホ端末ということになりそうだ。

 以下、10月以降の中古スマホをめぐる業界の動きを取材した。

2. 中古スマホ端末の流通拡大を見込みガイドラインの本格運用を開始

 中古スマホを取り扱う事業者の業界団体であるリユースモバイル・ジャパン(以下、RMJ)と一般社団法人携帯端末登録修理協議会が2018年に立ち上げた「リユースモバイルガイドライン検討会」は11月28日、スマホ等の買取に関する自主基準「リユースモバイルガイドライン」を改正し第二版を公表した。


 リユースモバイル検討会は、10月1日から施行された改正電気通信事業法の内容を受け、次のポイントからガイドラインの内容を拡充させた。

 中古端末を評価する際の格付け基準を定めていたが、新たに事業者間取引の際に利用する11段階のグレーディング基準を策定した。一般の消費者向け中古スマホ販売においては、従来のガイドラインで中古端末の格付けを「S」「A」「B」「C」「J」の5段階に設定していたが、新たに業者間取引における統一的な、そしてより詳細な格付け基準を設けた。

 また、ガイドラインではバッテリー状態の確認と評価結果の表示を推奨している。バッテリーの状態を確認できる機能を備える端末の場合には、その状態を確認することが望ましいとし、販売する際の表示例も具体的に示している。


 オークネット総研が12月20日に公表した『携帯料金「分離プラン」導入に伴う端末買い替えに関するアンケート』の調査結果(https://www.aucnet.co.jp/nw/20191220_01/)においても、中古スマホに対する抵抗感や敬遠するポイントのトップにバッテリーの持ちを気にする声が上がっている。中古スマホの購入を検討する誰もが、バッテリーの状態を気にしているということだ。ガイドラインでバッテリーの状態の評価結果が表示されることが推奨されることは、消費者にとって中古スマホを選択する際の重要な情報になることであろう。


 そしてガイドラインではネットワーク利用制限に対する保証を推奨している。スマホ買取時にネットワーク利用制限の確認は一般的なこととなっているが、今回改正されたガイドラインではネットワーク利用制限に引っかかった端末に対し、動作保証とは別に保証を付けることを推奨している。また、メーカー整備済製品(リファービッシュ品)の場合、その概要を解説し、メーカーによる保証の確認、表示を推奨している。国内でも、MVNOを中心にリファービッシュ品を取り扱う事業者が増えているが、その定義がユーザーにしっかり伝わっていない恐れがある。そこで、中古端末取扱店がリファービッシュ品を扱う場合、技適マークの有無を確認すること、メーカーや認定修理業者が整備したことや保証内容を明示することを推奨している。このほか、基準を満たしている中古端末取扱店をRMJが認証する制度も発表された。認証店にはRMJが認証番号を付与し、また認証店の証となるマークの掲示をさせる。


3. 10月以降のスマホ販売の変化はあったのか

  10月から施行された改正電気通信事業法では、端末値引きの上限を最大2万円とするなど、消費者にとっては端末購入時の負担が大きくなってしまう分、新たな料金プランでは毎月の通信料が引き下げに向かうという期待が持たれていた。しかしながら、各通信キャリアが導入した新料金プランは月額の通信料自体が従来のものと大きくは変わっておらず、端末の値引きが少なくなってしまった分、ユーザーにとっては負担が増えてしまった印象を感じている人が多いようだ。

 そうした中で、より安価にスマホの人気モデルを購入できるという観点から、中古スマホを選択肢に加えるユーザーが増えるのではないかという期待があった。通信キャリア各社はミドルレンジの新品スマホのラインアップを拡充してきており、このレンジが中古スマホと競合することになるが、実際に10月以降で販売に変化の兆しは出てきたのだろうか。

 まず、RMJの代表も務める、中古スマホを取り扱う株式会社携帯市場 代表取締役・粟津浜一氏によれば「例年の販売傾向と比べ大きな変化がない」という。
「携帯電話業界的には、とても大きな制度改革であり関係者は注目していたが、ところがサービスを利用する側である大半のユーザーはこうした販売の仕組みが変わったということをご存知ないのかもしれない。」(粟津氏)


 大阪・日本橋、東京・秋葉原等で買取店や中古スマホ販売店を展開するイオシスからも同じように感じているようだ。株式会社イオシス 買取事業統括マネージャーの横山直矢氏は「電気通信事業法改正によって不明確、複雑であった、料金プランや解約金等が分かりやすくなった」として今回の改正を前向きにとらえる一方で、「販売動向に関しては特に施策前と施策後で変わりはない」という。それでも、中古スマホの買取や仕入れ価格は多少高騰しつつあるそうだ。ただしこれは分離プランというよりもスマホの端末価格自体が年々高価になっていることのほうが影響しているのかもしれない。


 前述のオークネット総研『携帯料金「分離プラン」導入に伴う端末買い替えに関するアンケート』では、分離プランがどのようなものか知っているかという調査も行っているが、分離プランを「知らない」という回答が6割以上を占めている。販売施策が変わったということを認識していなければ、中古スマホにも関心は向いていかないであろう。


 一方、黎明期から携帯電話販売事業に携わり、現在、新品スマホの販売(通信キャリアの販売代理店)と、中古スマホ買取・販売事業も行う日本テレホン株式会社 代表取締役・岡田俊哉氏は、「売れている端末の傾向は大きな変化がみられないものの、販売代理店事業のほうではMNPによる新規契約は減少傾向になり、3キャリア間の乗換えは減っている」と話す。MNPによる新規契約が減っているというのは、いわゆる高額なキャッシュバック等がなくなったことにより、ユーザーから見ればお得感がなくなったことが最大要因と考えられ、いい意味ではスマホ販売が正常化してきたと見るべきだろう。 「とはいえ、MNPのポートアウトは増えており、おそらくユーザーはMVNOなどに流れているのでは」と岡田氏は推測している。

4. 中古スマホ流通はどう変わるのか、求められる中古販売店像は?

 岡田氏は、代理店事業、中古端末買取・販売事業の両面からスマホの販売動向を冷静に観察する。

 「中古スマホ事業に取り掛かる前に、日本テレホンでは総合リサイクルショップを手掛けたこともあった。そこで世の中のリサイクルのニーズを知ることができたが、一方で携帯電話販売は新品が極めて安価に購入できてしまう市場であったため、中古のマーケットは全く育ってこなかった。しかし、世界では少なくとも20年近く前から携帯電話の中古流通が始まり出していて、日本にも市場が広がる可能性はあると考えていた」(岡田氏)

 岡田氏によれば、わが国で中古の携帯電話端末の売買が始まり出したのは10数年前ごろで、当初は一部のマニア層に向けた商品だった。それがおよそ10年前ごろから、徐々に一般のユーザー層に拡がっていった。また、そうした中古端末を取り扱う店舗は当初は秋葉原などが中心であったが、それが徐々に一般の店頭に拡がるようになり、さらにインターネットを通じてオンラインで購入する販売形態に移っていったと過去の変遷を振り返る。


 「そして近年新たに、メルカリやヤフオクといったCtoCサービスの拡がりで、中古スマホの流通が個人間取引に増えている」(岡田氏)という。

「使用済みのスマホは、従来は自宅で埋蔵させておくか、どこかに売りに行くかの二択だった。これがCtoCサービスを使えば手軽に換金できることに消費者は気付いた。実際にCtoCサービスの普及と共に店頭での有料中古品の買取は減少傾向にある。CtoCサービスを通じて中古スマホの売買を行う個人も少なくない。おそらく販売者は数千円程度の少額粗利で販売している。私たちのような中古端末買取・販売事業者がビジネスをしていくには一定の利益を確保しなければ事業が成り立たない。下手をすれば中古端末買取・販売事業者は衰退しかねない」(岡田氏)と危機感を募らせる。

 では、今後、中古端末買取・販売事業者が存在感を高めていくにはどうしたらよいのか。

 「中古端末事業にビジネスとして取り組んでいる企業等は、端末買取後のデータ消去や、動作確認やクリーニングなど販売するための商品化に至るまで責任をもってやっている。中古端末に独自保証をつけているケースもある。リユースモバイルの信頼性を高め、それを消費者に浸透させていくことが重要と考えている」(岡田氏)

 先日、情報機器のハードディスクが廃棄を受託した企業から流出・転売されるという事件が起こったが、スマホの内蔵ストレージでも同様なことは起きかねず、しかるべき方法でデータ消去まで責任持って行ってくれる信頼できる業者に買取を依頼することがますます重要になる。中古端末を購入する際も、その端末の程度を明示して品質に対して責任を持ってくれる中古端末販売店が求められていく。

 前述のようにRMJはリユースモバイルガイドラインを改定し、また中古端末取扱店の認証制度もスタートさせたが、中古端末流通業界の信頼性を一層高めていくためには大変タイムリーで重要なアクションであると考える。

 「CtoCサービスの普及は、一方でこの一年程度の間に消費者側の経験値もだいぶ上げてくれるきっかけになったように感じている。SIMロック解除やSIM差し替え、APN設定など、ユーザー自身で行えるようになってきた。さらに中古端末の購買頻度も上がってきている。契約期間など関係なく買い替えができる時代に変わったので、気に入った端末があれば購入するようになる。そういう意味では、今後の中古端末流通業界はまだまだ拡大していく期待できる市場であると考えている」(岡田氏)

 改正電気通信事業法施行からまだわずかであり、今後も引き続き端末販売の変化について動向を見ていく必要があるが、中古スマホ端末の流通は今後も市場拡大を続けるものと期待したい。

本リリースのPDFはこちら

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 1967年、東京都生まれ。黎明期からの携帯電話業界動向をウォッチし、2000年に(株)アスキーにて携帯電話情報サイト『携帯24』を立ち上げ同Web編集長。コンテンツ業界を経て2004年独立。2007年、「携帯電話の遠隔医療応用に関する研究」に携わり徳島大学大学院工学研究科を修了、博士(工学)。2013年、青森公立大学准教授。スマートフォンの医療・ヘルスケア分野への応用をはじめ、ICTの地域社会での活用に関わる研究に従事。モバイル学会理事/副会長、ITヘルスケア学会理事。近著に『メディア技術史』(共著、北樹出版)など。1000台を超えるケータイのコレクションも保有している。

<オークネット総合研究所 概要>
 当総合研究所は、1985年に世界初の中古車TVオークション事業をスタートし、以来30年にわたりオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営。これまで培った実績とネットワークを活用し、専門性、信頼性の高い情報を発信することで、更なる業界発展に寄与することを目指しています。

所在地:〒107‐8349東京都港区北青山二丁目58号 青山OMスクエア
理事長:佐藤 俊司
U R L:http://www.aucnet.co.jp/aucnet-reseach/

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