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オークネット総研ニュースレター配信  ~世界の中古スマートフォン流通市場の実態を探る~
第22回:分離プラン義務化で売れ筋のスマホ端末はどう変化するか

2019年7月31日

 オークネット総合研究所(所在地:東京都港区/理事長:佐藤 俊司/URL:https://www.aucnet.co.jp/aucnet-reseach/)は、BtoBネットオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営し、独自の調査レポートなどを発表しています。当レポートは昨今注目される中古スマートフォン市場に関し、モバイル研究家・木暮 祐一氏に取材・調査を依頼し、ニュースレターとして不定期で配信しているものです。
 いよいよわが国では通信料金と端末代金とを切り分ける「分離プラン」が義務化され、今秋以降からは端末の大幅値引きが禁止されます。こうした動きは、はたして端末販売にどのような変化をもたらすのでしょうか。

1. いよいよ分離プラン義務化へ

 総務省は昨年10月から有識者による「モバイル市場の競争環境に関する研究会」を開催し、情報通信を取り巻く環境の変化を踏まえ利用者利益の向上が図られるよう、モバイル市場における事業者間の公正競争をさらに促進し、多様なサービスが低廉な料金で利用できる環境を整備するための方策について検討を行ってきた。

 とくに「端末の購入を条件とする通信料金の割引」と「通信契約の継続利用を条件とした、端末代金の割引」を問題視し、通信料金と端末代金とを切り分ける「分離プラン」の義務化を目指して議論を続けてきた。同様な議論は2007年にもあったが、抜け道が多かったために十分な成果を見いだせなかった。このため、今回の研究会では法改正まで行い、端末販売のルールについて徹底する構えである。本年5月10日には国会に提出されていた「電波法の一部を改正する法律案」と「電気通信事業法の一部を改正する法律案」が参議院本会議で可決され、2019年秋から通信料金と端末代金とを切り分ける「分離プラン」が正式に義務化されることとなった。これにより、NTTドコモの「月々サポート」「docomo with」、KDDIの「毎月割」、ソフトバンクの「月月割」などの端末購入を条件とした通信料金の割引が禁止される。

 また研究会ではこの改正法の公布を受け、総務省令についても議論が行われた。具体的には、通信契約の継続利用を条件とした端末の値引きは一律禁止。これにより、端末購入サポートやいわゆる「4年縛り」はできなくなる。また、通信契約の利用を条件とした携帯端末の割引の上限は2万円とすること、いわゆる「2年縛り」を途中で解約する場合の違約金は現行の9,500円から1,000円に引き下げること、また2年契約が「あり」と「なし」の双方の料金プランに設ける差額は月170円以下に制限すること、などを規律することとなった。

 当レポートでは長年に渡って中古スマートフォン(以下、スマホ)流通動向について実態に迫ってきたが、その中でたびたび中古スマホが市場に受け入れられる環境がわが国には整っていないことを指摘してきた。新品端末が安価に入手できた市場環境の中で、消費者にとってわざわざ中古スマホを選択する価値が見いだせなかったからだ。一方で世界に目を向ければ、回線契約と端末購入がセットで提供されているケースはあっても、わが国ほど大幅な値引き販売が行われている国は無かった(図1)。このため、中古端末のニーズも一定量あり、中古端末ビジネス市場が形成されてきた。


 今秋から完全分離されることになった端末販売においては、値引き額の上限も定められたことで、端末の販売価格はようやく世界主要国と同水準になることが見込まれ、これにより世界に流出しているばかりであったわが国の中古端末(下取端末、買取端末)の流れにも変化が出てくるはずだ。わが国で新たな中古端末ビジネス市場が形成される期待も出てくる。

 じつは、日本より先に、端末の大幅値引きが禁止された国としては韓国がある。また、キャリア間競争によって、実質的に端末と回線が分離して販売されようになった国としてはアメリカがある。実際に、韓国やアメリカで端末販売が見直されたことで、どのような市場変化が起きたのだろうか。

2. 韓国スマホ市場で起きたこと

 韓国の携帯電話サービスは、MNOの構成や市場競争環境などがわが国のそれと酷似しており、わが国のサービスを展望していく上で参考になることが多い。韓国をはじめとするアジアの通信サービス市場に詳しい、ITジャーナリストの山根康宏氏によれば「韓国の3キャリアによる端末の値引き販売はときにはわが国以上に激しい競争が繰り広げられ、過剰な値引きがたびたび横行し、そのたびに政府が介入して是正が試みられてきた」という。


 韓国においては、2010年代半ばにはわが国と同様に、スマホの普及によって世帯における通信費負担に急激な増加が見られた。同時に過剰な端末の値引き販売が行われ、2014年には「移動通信端末の公正で透明な流通秩序を確立し、移動通信産業の健全な発達と利用者の権益を保護する」という観点から、「移動通信端末装置流通構造改善法」が制定された。この法律では購入支援を目的に、契約形態、サービスプラン、利用者の条件等によって変化する不当な端末購入補助金を禁止した。また端末の購入補助金に関しては3年間の時限立法で、端末購入時の補助金額上限が定められ(通信事業者および代理店に認められた額の合計が最大37万9,500ウォン=約3万5千円)、また特定の料金プラン等を一定期間使用する義務を課しその違反時に違約金を支払わせるような個別契約を禁止した。このほか、端末購入時に補助金を受けられなかった利用者や、中古端末などを別途調達して通信回線の契約のみを行う利用者に対しても、補助金と同等の料金割引を提供しなくてはならないとした。また、端末補助金の額等を契約者に公示することも義務付けられた。

 この法律の施行で、市場にどのような変化が起きたのか。山根氏によれば、同条件の料金プランを選択すると3キャリアとも端末の販売価格は同額になるために、ユーザーは3キャリアのサービスの質や料金を比較して選択するようになったという。結果として、上昇し続けてきた世帯の通信費負担がこの法律の施行後に減少に転じたという。また、端末購入時の補助金の上限額を設け、新規・MNPともに同額となったことで、MNPによる通信キャリアの乗り換えは減少し、機種変更が増加した。

 また、売れ筋の中心となるスマホは、それ以前は高価格帯のプレミアム端末ばかりだったが、この法律施行後は低・中価格帯端末へシフトしていった。高額な端末購入補助金によって、本来であれば10万円以上するべき高価格帯端末が安価に購入できるとなれば、ユーザーの多くはそうした端末を選択するのは当然のこと。その一方で低・中価格帯端末や中古端末は関心が持たれなかったのだが、市場が健全化され、本来の市場価格で販売されることとなれば、ユーザーは端末の性能や装備を慎重に比較し、適正な価値を評価した上で端末を選ぶことになる。当然といえば当然のことなのだが、その価格を払う価値がある製品であるかどうかを慎重に見極めるようになる。

 この結果、ハイエンド製品を中心に展開していたサムスン電子やLGエレクトロニクスは一時的に販売不振に陥ったという。

 実際に韓国のショップ店頭を眺めると、プレミアム端末が並ぶ一方で、HUAWEI製の端末やサムスン電子のA30などの低・中価格帯の端末がそれなりの店頭スペースを確保し、実際に多くのユーザーが手に取って製品比べしている様子をうかがうことができた。(写真2・3)


3. 米国ではキャリアがリファービッシュiPhoneを扱う例も

  一方、アメリカも日本や韓国と同様に、通信キャリアを主体とした垂直統合モデルで成長を遂げてきた国である。アメリカでは、日本と同様に端末と回線契約のセット販売も、あるいは通信契約のみの提供も行われているが、セット販売の場合でもほとんど端末割引は行っていない。また旧端末の下取りが行われているが、これは下取額を24カ月の分割にして、毎月の通信料金からの値引きに充てており、解約してしまうとその恩恵を受けられなくなる。

 総務省で情報通信審議会専門委員を務め、世界の情報通信政策動向にも詳しい野村総合研究所 パートナーの北俊一氏は、本年3月にアメリカ市場の現地調査に行かれてきた。やはり米国でも売れ筋の端末は低・中価格帯の端末にシフトしている傾向が見られるという。また、富裕層から移民層まで、様々な階層の人たちがいるアメリカの場合、通信キャリアによっても、あるいは地域によっても顧客層にそれぞれ特色があり、販売店はユーザーのニーズに合わせてスマホのラインアップを工夫する必要があるという。


 そうした中で着目したいことは、アメリカのキャリアでは、iPhoneの取り扱いの中で、新品端末のほかに中古やリファービッシュiPhoneの取り扱いを行っているケースが見受けられるのだという。北氏によれば、大々的に店頭に並べているわけではないが、顧客からより安価なiPhoneの購入要望があれば、そうした端末を販売するケースがあるのだという。リファービッシュiPhoneに関しては、Appleが認定したCPO(Certified Pre-Owned)品ではないためにAppleCareには加入できないが、キャリアが提供する保証サービスは契約可能で、いわばキャリア認定リファービッシュ端末として流通している。

 また、北氏が現地調査されてきた中で変化が見られてきた傾向に、Sprintのキャリアショップを中心に、バックヤードで端末修理を行っているところが増えているという。かつてわが国でも、携帯電話端末の簡易的な修理はキャリアショップのバックヤードで行う体制を持っていたが、現在は店頭で端末を預かり、すべてメーカー等へ修理を依頼する形になっている。アメリカでも同様な状況だったが、現在では再び修理体制を整えるところが出てきているようだ。やはりユーザーからの修理依頼が多いということなのだろう。また、こうしたキャリアショップに対し、大手中古端末流通事業者や大手携帯補償サービス提供事業者がパーツ供給を含む体制を整えつつあるようだ。必要あれば、こうした企業から修理スタッフを派遣するようなサポートも行っている。

4. 今後の日本での売れ筋端末はどうなるか

 わが国ではいよいよ今秋から端末販売が完全分離されることになり、端末の割引上限額も2万円以内に抑えられるということで、流通するスマホ端末の傾向は大きく変わっていくと見られている。実際に、2019年夏モデルとして各キャリアがラインアップしてきたスマホ端末を見ていると、中価格帯の端末を拡充している様子がうかがえる。

 野村総合研究所 北俊一氏は、「ミドルレンジのAndroid端末がそこそこ売れるようになるのではないか。たとえば、とあるキャリアショップでキャンペーンとしてGoogle Pixel 3aを販売している様子を見ていたが、世代関係なく多くの人たちに訴求していた。キャリアとしては、定価が4万円程度のPixel 3aは、10万円を超えるiPhoneよりも、端末購入補助額が少なくて済む分、代理店への販売手数料(台あたりの粗利)を増やせるため、代理店はより儲かる端末をお客様に推奨することになる。わが国ではiPhoneのシェアが高いが、絶対にiPhoneでなければダメというユーザーはそれほど多くはなく、こうした店頭におけるキャンペーンなどによって、ショップスタッフから強く推奨されれば、iPhoneからミドルレンジのAndroid端末にシフトしていく可能性がある」とにらむ。

 わが国におけるiPhoneのシェアは依然として高い。とはいえ、秋以降はiPhoneの販売価格は高価になることが想定され、わが国のユーザーはより安価なiPhoneを求めることになりそうだ。となると、選択肢は型落ちの新品、中古品、そしてリファービッシュ品ということも考えられる。

 わが国でも、MVNOからリファービッシュiPhoneがラインアップされたことがある。そうした端末を取り扱ったMVNOに取材を試みたが、その供給ルートについては明らかにしてもらえなかった。アメリカのキャリアショップではリファービッシュiPhoneが取り扱われているということだが、ぜひわが国においても米国のようにそうした端末の健全な流通経路が構築され、それらを必要とするMVNOなどへ安定した端末供給が行われることが望まれる。中古端末にせよ、リファービッシュ端末にせよ、これまでわが国では選択肢として考えづらかった端末が今後改めて注目されていくことが考えられる。

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写真9

 1967年、東京都生まれ。黎明期からの携帯電話業界動向をウォッチし、2000年に(株)アスキーにて携帯電話情報サイト『携帯24』を立ち上げ同Web編集長。コンテンツ業界を経て2004年独立。2007年、「携帯電話の遠隔医療応用に関する研究」に携わり徳島大学大学院工学研究科を修了、博士(工学)。2013年、青森公立大学准教授。スマートフォンの医療・ヘルスケア分野への応用をはじめ、ICTの地域社会での活用に関わる研究に従事。モバイル学会理事/副会長、ITヘルスケア学会理事。近著に『メディア技術史』(共著、北樹出版)など。1000台を超えるケータイのコレクションも保有している。

<オークネット総合研究所 概要>
 当総合研究所は、1985年に世界初の中古車TVオークション事業をスタートし、以来30年にわたりオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営。これまで培った実績とネットワークを活用し、専門性、信頼性の高い情報を発信することで、更なる業界発展に寄与することを目指しています。

所在地:〒107‐8349東京都港区北青山二丁目58号 青山OMスクエア
理事長:佐藤 俊司
U R L:http://www.aucnet.co.jp/aucnet-reseach/

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<本件に関するお問合せ>
株式会社オークネット 総合企画室:土屋 貴幸、吉岡 基樹
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※本資料を利用される際は、オークネットにご一報の上、提供元を「オークネット総合研究所」と明記して、ご利用ください。



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