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オークネット総研ニュースレター配信  ~世界の中古スマートフォン流通市場の実態を探る~
第20回:国内における中古スマホ流通ガイドラインの策定、その背景と役割とは
~RMJ、MRRが「リユースモバイル端末の取り扱いに関するガイドライン」を発表~

2019年3月12日

 オークネット総合研究所(所在地:東京都港区/理事長:佐藤 俊司/URL:http://www.aucnet.co.jp /aucnet-reseach/)は、BtoBネットオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営し、独自の調査レポートなどを発表しています。当レポートは昨今注目される中古スマートフォン市場に関し、モバイル研究家・木暮 祐一氏に取材・調査を依頼し、ニュースレターとして不定期で配信しているものです。
 このほど、リユースモバイル・ジャパン(RMJ)と携帯端末登録修理協議会(MRR)は「リユースモバイル端末の取り扱いに関するガイドライン」を発表しました。今後わが国における中古スマートフォン端末流通を活性化させていく上で市場の信頼性を高め、市場の発展に寄与するものと期待されています。今回のレポートでは、このガイドラインが生まれた背景から、ガイドラインの詳細まで踏み込んでいきます。

1. 国内中古スマホ市場発展に向けた議論の経過

 総務省は2017年12月から、モバイル市場におけるMVNOを含めた事業者間の公正な競争をさらに促進し、利用者のニーズに応じた多様なサービスの提供や料金の低廉化を通じた利用者利益の向上を図るための方策について議論するために「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」を計6回開催し、2018年4月に最終報告書※1をまとめた。また同時期に公正取引委員会が「携帯電話分野に関する意見交換会」を開催し、公正競争の観点から課題をまとめ、2018年6月に報告書※2を公表した。

 これらの検討会、意見交換会の中では、中古スマホ端末取引市場に関しても課題が検討された。中古スマホ端末の国内流通促進という観点から、「MNOが中古端末(盗品・不払い端末と確認されたものを除く)のSIMロック解除に応じること」や「下取り端末の流通・販売を行う者に対してMNOが当該下取り端末の国内市場での販売を制限することは、業務改善命令の対象となることを明確化する」とした。これらを受けて2018年8月に「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」(2017年1月10日策定、2018年8月28日最終改正)を改正し、(1)下取り端末の流通・販売を行う者に対してMNOが当該下取り端末の国内市場での販売を制限することは、業務改善命令の対象となることを明確に規定し、また、(2)2019年9月1日以降、中古端末のSIMロック解除に応じることを求めた。中古端末のSIMロック解除に関しては、すでにNTTドコモは先じて2019年2月20日から対応しており、KDDI、ソフトバンクも2019年9月までに対応する予定となっている。

 さらに総務省はこの検討会の最終報告書の中で、中古スマホ端末の流通拡大および利用者の観点から、中古端末や修理部品の格付けについて民間の共通指針の策定を後押しする、適正な修理部品の流通や修理済端末の性能試験に関する取組の推進、修理の人材育成等への取組を後押しする、中古端末事業者やその業界団体による中古端末の流通阻害要因の排除に向けた取組(盗品等の排除、個人情報の取り扱いやデータ消去の適正化等)を後押しする、といった考え方を示している。

 こうした背景のもと、中古端末流通事業者の業界団体であるリユースモバイル・ジャパン(RMJ:Reuse Mobile Japan)と、携帯端末の登録修理制度を支える業界団体である一般社団法人携帯端末登録修理協議会(MRR:Mobile Terminal Registered Repair Council)に加盟する有志企業が集まり、2018年7月に「リユースモバイル関連ガイドライン検討会」を立ち上げ、消費者・関連事業者にとって安心で安全な中古端末取引市場の形成と発展に向け、端末の格付基準、端末内の利用者情報の処理および関連法令の遵守等に関し、基本的な考え方及び事業者等が中古端末の流通・検査・販売等を行う際に留意すべき事項を整理したガイドラインの作成を進めてきた。このほど、このRMJとMRRによって策定が進められてきたガイドラインが2019年3月8日に公表※3されたので、以下にその内容を解説したい。

※1 総務省「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」最終報告書
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban03_02000477.html
※2 公正取引委員会「携帯電話分野に関する意見交換会」報告書
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h30/jun/180628.html
※3 リユースモバイルガイドライン初版(2019年3月8日公表)
http://rm-j.jp/pdf/RMJ_Guidelines.pdf

2.リユースモバイルガイドラインの概要

 このリユースモバイルガイドラインは総務省検討会で示された観点からとくに次の3つを柱にすべく体制を整え、検討を進めてきたものである。

(1)リユースモバイルの格付け基準、機能・性能の確認方法について
(2)リユースモバイルの個人情報の取り扱い、データ消去について
(3)リユースモバイルを扱う企業が具備するのが望ましい要件、リユースモバイルを扱う人材の育成について

 (1)の格付け基準、その確認方法とは、市場を流通する中古端末を取引する上で、端末のグレーディング基準の統一を図ると共に、その確認方法についても明記することで、実際に端末を確認できないようなオンライン取引などにおいて一定品質を保った端末の売買ができるようにするというものである。格付け基準は中古端末取扱業者でそれぞれ独自の基準を設けて運用されているが、その業界標準となる基準をつくることに意義がある。

 また(2)は、ユーザーが安心して端末を手放したり購入できるよう、端末内の個人情報の取り扱いを厳格化し、とくに端末のデータ消去についてルールを設けて、徹底していくことで、中古端末およびその流通に関する信頼性を高めていこうというものである。

 さらに、それらの基準を担保していくために中古端末取扱事業者の設備や取扱人材の育成について基準を定めていこうというのが(3)の趣旨となる。検討を進めていく体制は、RMJ会長である粟津浜一氏(株式会社携帯市場 代表取締役)を座長とし、「格付基準等作業部会」「個人情報等作業部会」「トレーザビリティ等作業部会」の3つの作業部会でのアウトプットをベースに、RMJ理事会員、MRR理事会員で構成される「リユースモバイル関連ガイドライン検討会」にて、総務省もオブザーバーとして関わり議論を進めてきた。


<図1>リユースモバイル関連ガイドライン検討会の体制図(2018年7月6日発表プレスリリースより)

 今回公表されたガイドラインは国内における中古端末市場のニーズ増加をにらみ、消費者が安心して端末を売却および購入できることを重視し、その信頼性を高めることを目的としている。ガイドラインでは、まず全般に関する留意事項として、買取、検査・格付、販売という流れの各業務フローの中で、ガイドラインに関わらず法令に基づいて遵守しなくてはいけない「必須事項」、ガイドラインに従う場合に求められる「要求事項」、そして必須・要求事項ではないが対応することが望ましい「推奨事項」に分けて留意事項を整理している。


<図2>買取、検査・格付、販売の流れとガイドライン要求事項(リユースモバイルガイドラインより)

 必須事項では、たとえば古物営業法、個人情報保護法に基づく確認や、特商法等に基づく情報表示の徹底などの法令順守に関して内容の留意を求めている。その上でガイドラインの要求事項として買取および検査・格付の業務における安全安心評価、外装評価および機能評価に基づいた検査を行い、格付表示することを求めている。また推奨事項としては検査・格付時に端末のクリーニングを行うことや、販売においては販売履歴の記録やオンライン販売時に商品写真を掲載することなどが望ましいとしている。

3. 買取~検査・格付~販売業務における留意事項

 まず端末買取時に留意すべきポイントであるが、古物営業法に基づく必要な確認の実施を徹底することと、不良端末ではないことの確認(ネットワーク利用制限はないか、技適マークが表示されているか、等)が求められる。また、利用者情報の消去等に関し、必要な確認の実施を行う。遠隔操作ロック、アクティベーションロック等が解除されているか、利用者情報の残存がないか(オールリセットを行ったか)などの確認を行う。アクティベーションロックなど、買取依頼者でしかできない措置については、買取時に説明を行い、対応を促進させる。

 端末のデータ消去処理は、端末のオールリセット(初期化)と専用ソフトウェアを用いた上書き消去がある。まず端末買取時にオールリセットを行い、さらに検査・格付時にももう一度行う、2回の実施を徹底する。上書き消去は検査時に実施するが、一部上書き消去ができない機種については、買取時に買取依頼者に明示することとする。また消去時には必ず消去を行った者以外の者が消去できているかを確認する第三者による確認を義務付けている。非接触ICカード(FeliCa)情報は端末の初期化や上書き消去では消せない情報がある。これは買取依頼者しか消去できないため、これも買取時に買取依頼者に説明を行い、対応を促進させる。利用者情報が消去できない端末は再販をせず廃棄するものとする。

 続いて端末の格付けである。これはまず外装評価によってS、A、B、C、Jの5段階にグレーディングを行う。端末は液晶面、正面、背面、天面、底面、左右側面の各面区分ごとに傷の有無等を確認していく。液晶面や正面のガラス割れ・欠け、その他の面のケースの割れおよび目立つヒビ、欠け、凹みがある場合は、その他の面の状態に関わらずC以下の評価とする。汚れについては拭き取り除去を前提とし、ウエスやクリーナー等で拭き取り除去できればOKとし、拭き取っても除去できない汚れは、傷・塗装剥がれとして判定を行う。


<図3>端末評価時における外装・機能区分(リユースモバイルガイドラインより)

 リユースモバイルガイドラインにおいて、標準として定める外装の評価基準は次の通りとなる。Sランクは未使用品(新品同様の状態)、Aランクは目立つ傷がなく非常にきれいな状態(液晶への傷がなく外装の傷・汚れが微細)、Bランクは細かな傷・薄いかすり傷があり、使用感がある状態(液晶に薄い傷や、外装に微細な傷・汚れ等が多少見受けられる)、Cランクは目立つ傷や擦り傷等があり、明らかに使用感がある状態(液晶に目立つ傷、複数の傷がある。全体的に傷・汚れ・塗装剥がれが目立つ)、Jランクは目に見えてダメージがあり、激しい損傷または破損している状態(液晶を含め全般に傷や打痕、割れ等がある)、となっている。BtoB向けに使われている外装評価基準の中には、たとえばBランクの評価において「○センチ以内の傷・薄いかすり傷が○個以内」といった定量的な基準を定めているもののあるが、今回定められたガイドラインにおいてはそこまで踏み込んではおらず、今後BtoC、BtoB領域の定量的格付基準の相関を整理し、統一格付基準の策定を目指していくとしている。


<表1>外装評価基準(リユースモバイルガイドラインより)

 続いて機能評価を行う。これは端末の各機能(基本機能および接続機能)について、OK、NGで評価を行い、販売時に表示するものとする。評価項目は表2に示す。


<表2>機能評価項目(リユースモバイルガイドラインより)

 外装評価、機能評価の結果は販売時に表示することが求められる。また、J評価となった端末は部品取り用や再資源化とすることが望ましいが、利用者情報の消去を行ったうえでASIS(アズイズ、現状販売)として販売することは妨げないとしている。

 ガイドラインでは販売時における評価基準の評価内容明示例や、ランク別の推奨保証期間なども示している。商品情報としては、販売元通信事業者名、メーカー名、機種名、型番、IMEI番号、ネットワーク利用制限の判定結果および判定△の場合に講ずる措置、格付評価結果、付属品の有無、その他不具合情報、SIMロック解除を行った場合はその旨、保証期間、商品の価格などとなっている。また、格付結果については、たとえばB商品においてAに近いものを「B+」、Cに近いものを「B-」と表示するといったことは妨げないとしている。

 グレーディング基準は個人のユーザーが端末を手放したり購入したりする際に活用するBtoC市場での活用を前提に基準を策定している。これまでは格付けには統一の基準が無かったために、同じ「A」ランク品といっても取扱業者によって品質が異なるといった実態があった。今回、統一基準が作られたことで安心して消費者が取引できるようになる。最近では一般のユーザーがオンラインショッピングで中古スマホ端末を購入するケースも増えており、こうした格付け基準が参考となり消費に結びついていくことを目指している。

4. 国内中古スマホ市場拡大に向け今後はBtoB領域への統一基準策定へ

 総務省の「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」で課題になりながらも、大きな前進がみられなかった点や、公正取引委員会が「意見交換会」で指摘したような公正競争を阻害する要因への対応を包含しながら課題の解決やルール作りにさらに取り組んでいくべく、総務省は新たに2018年10月から「モバイル市場の競争環境に関する研究会」を開催してきた。2019年2月22日には、第9回目となる研究会が開催され、「モバイル市場の競争環境に関する研究会 中間報告書骨子(案)」が公表された。

 一貫して総務省は、通信契約と端末販売のセットでの提供や複雑な料金体系などを問題視し、通信契約と端末販売の完全分離を目指している。今後法改正なども踏まえ、今春以降、各キャリアに分離プランの導入が義務付けられることで、通信契約とセットになった端末の大幅な値引きは終息に向かう。このため、端末価格は高騰し販売が落ち込むのではという懸念もあるが、逆に中・低価格帯のスマホの販売や、中古スマホ端末の流通拡大が期待されるようになった。

 実際に世界では、高価格な最新ハイエンド端末から、中~低価格帯まで様々なバリエーションの端末がラインアップされており、それらはさらに新品、中古からセレクトできる市場が整っている。一方で、わが国では新品のハイエンドスマホが様々な割引の組み合わせで“見た目”は安価に購入できていたので、わざわざ中古スマホを検討する余地は見られなかった。実際に中古スマホを取り扱う販売ルートも限られていた。

 今回のリユースモバイル関連ガイドライン検討会で座長を務めた粟津浜一氏(株式会社携帯市場 代表取締役)に、今後の国内における中古スマホ端末販売への期待について話を伺った。


<写真>リユースモバイル・ジャパン 会長/株式会社携帯市場 代表取締役 粟津浜一氏

 「総務省の検討会、研究会で議論されてきたことは、通信料金と端末代金の完全分離を目指した点である。これまでのいわば“行き過ぎた”値引き合戦によるスマホの廉価販売に終止符が打たれ、完全分離が実現することで、MVNOの活性化や中古スマホ市場の拡大など、わが国におけるスマホ流通や通信回線の契約等に関して大きなターニングポイントとなるはずである。おそらく売れ筋となるのは、2~3万円の価格帯のスマホになるのではと見ている。この辺りで、再び国産メーカーにも販売拡大のチャンスが訪れるのではないかと見ている。そしてこの価格帯と競合していくのが中古スマホになるのではないか。中古スマホ端末を利用するユーザーの割合はわが国ではまだ10%にも満たない。個人的には、20%ぐらいまでは十分に拡がっていく市場だと考えている」(粟津氏)

 今回公表されたガイドラインはとくに国内における一般消費者向けに中古スマホ市場の拡大を目指すことに重点を置いたものとしており、このためガイドライン(初版)の適用範囲はまずはBtoC事業者へ適用することを優先して策定されている。


<図4>ガイドライン(初版)の適用範囲と今後期待できる商流
(リユースモバイルガイドライン記者発表会発表資料より)

 粟津氏は、「今回このガイドラインの運用によって、今後はBtoB事業者への適用拡大も目指し、さらに国内から海外市場へと流れてしまっている中古スマホ端末の、国内市場再流通への契機にもしていきたい」と考える。

 総務省検討会や公正取引委員会が指摘する、国内でMNOが下取等で集めた中古スマホ端末が海外市場に流出してしまっている要因は、大量の端末数に対して国内市場が適価で受け入れ迅速に流通させる体制が整っていなかったことを指摘する向きもあった。ガイドラインの成果で国内における中古スマホ端末の流通がより安定的なものになれば、海外に流れるだけだったBtoB市場の中古スマホ端末が国内市場に再流通していく新たな商流が生まれる可能性もある(図4)。

 今回リユースモバイル関連ガイドライン検討会が発表したガイドラインはまだ「初版」であり、今後RMJ加盟の中古スマホ取扱業者はガイドラインに準拠するための準備作業を進めつつ、本格運用に向けた詳細を詰めていき、さらにBtoCとBtoB領域における格付けの統一基準策定を目指していく。またガイドラインによって統一グレーディング基準が定められたとしても、中古スマホ取扱事業者がこれを導入し、かつ厳格に運用しなくては意味がない。そこでガイドラインに沿ったグレーディング基準を導入し適正に運用できている事業者に対して事業者認定する「認定事業者制度」を創設し、10月初旬にはガイドラインの発効と認定事業者制度の運用を開始していく予定としている。


<図5>今後の検討スケジュール(リユースモバイルガイドライン記者発表会発表資料より)

 次回以降は、ガイドラインで定めるグレーディングやデータ消去に関して、国内の中古スマホ端末取引市場の現場では実際にどのように運用しているのかを取材しレポートしていきたい。

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 1967年、東京都生まれ。黎明期からの携帯電話業界動向をウォッチし、2000年に(株)アスキーにて携帯電話情報サイト『携帯24』を立ち上げ同Web編集長。コンテンツ業界を経て2004年独立。2007年、「携帯電話の遠隔医療応用に関する研究」に携わり徳島大学大学院工学研究科を修了、博士(工学)。2013年、青森公立大学准教授。スマートフォンの医療・ヘルスケア分野への応用をはじめ、ICTの地域社会での活用に関わる研究に従事。モバイル学会理事/副会長、ITヘルスケア学会理事。近著に『メディア技術史』(共著、北樹出版)など。1000台を超えるケータイのコレクションも保有している。

<オークネット総合研究所 概要>
 当総合研究所は、1985年に世界初の中古車TVオークション事業をスタートし、以来30年にわたりオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営。これまで培った実績とネットワークを活用し、専門性、信頼性の高い情報を発信することで、更なる業界発展に寄与することを目指しています。

所在地:〒107‐8349東京都港区北青山二丁目58号 青山OMスクエア
理事長:佐藤 俊司
U R L:http://www.aucnet.co.jp/aucnet-reseach/

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