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オークネット総研ニュースレター配信  ~世界の中古スマートフォン流通市場の実態を探る~
第19回:スマートフォン修理パーツをめぐる国内事業~自動車業界のような柔軟な考え方はまだ遠い~

2018年12月5日

 オークネット総合研究所(所在地:東京都港区/理事長:佐藤 俊司/URL:http://www.aucnet.co.jp /aucnet-reseach/)は、BtoBネットオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営し、独自の調査レポートなどを発表しています。当レポートは昨今注目される中古スマートフォン市場に関し、モバイル研究家・木暮 祐一氏に取材・調査を依頼し、ニュースレターとして不定期で配信しているものです。
 これまで当レポートでは、国内外の中古スマートフォン流通をめぐる実態に迫ってきました。中古スマートフォン流通の上で必要となるのが、破損した中古スマートフォンを修理・再生するためのサービス提供市場の存在です。国内には登録修理業者制度があるものの、まだ非正規修理業者も少なくありません。そしてこうした修理業者はどのようなパーツを使用して端末を修理しているのでしょうか。国内の修理パーツ事情に迫りました。

1. 国内のスマホ修理業者全体概況

 これまで、中国におけるスマートフォン(以下、スマホ)修理部品の流通・製造事情を追ってきた。今回は再び国内に目を向けてみたい。わが国でもスマホ修理のニーズは高く、国内の修理店の数は2,400を超えると言われている。わが国のスマホで最大のシェアがあるiPhoneの修理を例にすると、それに対応した修理店は3種類の業者が存在する。

 まず1つ目はAppleの正規サービスプロバイダで、Apple Storeやカメラのキタムラ、ビックカメラなどのAppleから認定を受けた修理業者である。2つ目は非正規の修理業者ながら総務省の登録修理業者制度に登録している修理業者(以下、登録修理業者)、そして3つ目はそれ以外の非正規の修理業者(以下、非正規修理業者)である。正規サービスプロバイダは国内に約100店舗あり、当然のことながらAppleの純正パーツを使用して修理が施され、ここで修理が行われた端末はその後もiPhoneのメーカー保証等が継続して適用される。

 本稿で着目したいのは、2つ目の登録修理業者と、それ以外の非正規修理業者における修理についてである。登録修理業者はAppleから見れば非正規修理業者と同じ扱いであり、そこで修理された端末のメーカー保証は無効になる場合もあるが、修理された端末の電波特性等が適法であることを条件に総務省に登録を認められた修理店であり、修理端末が安心して使用できることは担保されている。登録修理業者は2018年11月現在で56社、計803拠点となっている。

 一方、そうした総務省への登録も行っていない非正規修理業者がじつは最も多く、全国におよそ1,500店舗あるとされる。これら非正規修理業者での修理は電波法及び電気通信事業法の技術基準を満たしているかどうかの試験が行われていないので、そうした店舗で修理された端末は法令上はグレーな位置づけになってしまう。

 正規サービスプロバイダ以外の第三者によるスマホ修理に関するわが国の政策の動きを振り返ると、2012年ごろからスマホの修理事業がひとつの産業になり得るとして総務省の検討会(電波の有効利用の促進に関する検討会)等で話題に上がるようになり、これが2015年4月から施行された登録修理業者制度へとつながっていった。こうした動きの詳細は、当レポート第5回でも触れているので参考にされたい。
(第5回レポート「我が国におけるスマートフォン修理をめぐる動向」
https://www.aucnet.co.jp/wp-content/uploads/da18c9ab03f9fb1a00ea063386ecdf6d.pdf)

2. どのような修理パーツが使われているのか

 総務省が修理したスマホの安全性を担保するために施行された登録修理業者制度だが、登録修理業者になれば大手を振ってスマホ修理事業を営むことができるものの、個々の修理事業者が総務省に登録手続きを行うことは簡単ではない。そこで関係する事業者が協議会等を設立し、登録申請をめぐる情報共有やノウハウの蓄積を図っている。

 まず、その団体の一つである携帯端末登録修理協議会(MRR)に伺い、国内で修理に使われている修理パーツはどのようなものかを伺ってきた。携帯端末登録修理協議会事務局の伊藤幹典氏は次のように説明いただいた。


「まず、正規サービスプロバイダ以外には、基本的に純正パーツは供給されない。このため、登録修理業者や非正規修理業者では純正パーツを修理再生した『再生パーツ』や、サードパーティが生産した『OEMパーツ』などを使って修理を行っている。登録修理業者は、登録申請時に修理する機種ごとの修理手順と修理後の端末の特性試験及び試験の結果を届け出ており、登録後も、修理した端末が法令で定める技術基準に適合しているかを確認するために、定期的に試験を行なっている。修理を行う際には、届け出た修理手順に従って同じパーツを使用して修理を行わなければならない。修理パーツを変更すると電波特性も変わってしまう懸念があり、パーツ自体も安定供給を受けられるルートの確保が必要である。正規サービスプロバイダとの違いは、修理に使うパーツにもよるが、正規修理よりも安価に提供できることがポイントとなる」(伊藤氏)

 さらに、総務省に登録を行っていない非正規修理業者については、修理に使用するパーツのクオリティは様々であるという。修理店によってはクオリティの異なるパーツを修理価格に応じて選べるようにしているところもある。とりあえず端末が動作さえすればよいので安価に修理したいというようなニーズも実際にはある。パーツのクオリティによっては修理時には動作しても、数カ月もすれば故障してしまうような粗悪品もあるという。

「総務省が定めた登録修理業者制度で登録された修理業者は、その修理品について電波法及び電気通信事業法の技術基準への適合性が担保されたことになるわけだが、端末メーカーが認定した修理店というわけではない。したがって登録修理業者による修理においても、非正規修理業者で修理したものと同様メーカー保証が効かなくなるケースがある。修理後のアフターサポートについては、修理店が独自に修理保証を付けるなどしてリカバーしている」(伊藤氏)

 では登録修理業者と非正規修理業者では、修理パーツや修理対応でどのような違いがあるのだろうか。登録修理業者であり、全国63店舗の修理店チェーン「アイサポ」を展開するほか、MVNOも手がける株式会社ギア MVNO事業部本部長 望月弘晃氏にお話を伺った。望月氏は、携帯端末登録修理協議会の理事も務めており、スマホ修理業界の健全な発展と登録修理業者制度の円滑な推進のために尽力されてきた一人である。


まず、スマホの修理業者はどういった事業者が参入しているのか伺った。

「スマホ修理業者は、規模の大小も様々である。中古端末事業者系や外資系修理大手などの大企業から、オーナー1人で営業しているような個人店まである。今や、スマホ修理パーツはネット通販もあるので、そうしたパーツを自分のスマホの修理用に購入して修理してみたところ上手にできたので、友達のスマホも修理するようになり、さらにネットで修理請負をするようになったら安定した副業になってしまった、といった店舗を持たないオンライン個人修理店も存在する」(望月氏)

 登録修理業者や非正規修理業者ではどのような修理パーツを使っているのか?

「いずれも、いわゆるサードパーティが生産したOEMパーツを使う。当社では『互換品』と呼んでいる。このパーツは中国製で、当社の場合は安定供給可能なルートを通じて輸入している。万全な検品体制を整えており、製造者による検品、中国側輸出業者による検品、そして当社で受入時の検品を行った上で各店舗に配備している。修理時にも動作確認を行う。登録修理業者では、総務省に登録を行った際の修理手順を遵守し、また電波特性も登録時と同じ品質を保てるパーツを使わなくてはならない。永続的に同一の修理パーツを使うというのは実際には不可能で、同一の品質を保てる体制を整えるようにしている。当社の場合は前述の検品体制によってその品質を保持している。また、純正パーツを修理した『再生パーツ』も市場には流通している。じつは再生パーツといっても、ガラスだけ交換したものから、液晶部分だけ純正中古品を活かし、デジタイザやコネクタ等はサードパーティが生産したものを組み合わせているようなものまである。大量の修理を同一品質で実施するには安定供給可能なパーツを使う必要があり、当社の場合は新品互換パーツを使うほうが品質が安定していると考えている」(望月氏)


 登録修理業者は、修理及び修理の確認の記録を10年間保存することを義務として求められているという。当初は、携帯端末登録修理協議会で、修理事業者会員向けに共通の修理記録データベースを構築し、必要に応じて会員企業(修理事業者、通信事業者及び端末メーカー)が検索できるようにしたが、登録修理業者の登録対象機種の殆どがiPhoneであるため、現在はデータベースの運用は一旦停止し、記録の保存は事業者ごとに任せている。株式会社ギアの場合は、国内63店舗共通のデータベースを構築し、顧客、修理端末、使用した修理部品などを記録している。パーツについてはどこの店舗で使用したかといったパーツのトレーザビリティも可能になっており、修理後に万が一トラブルが発生した場合に対応できるようになっている。

「総務省としても、登録修理業者は増やしていきたい意向だ。修理品質を担保するためにも、スマホ修理を行う事業者は総務省への登録を行うことが望ましい。登録修理業者制度で登録を行うには電波法及び電気通信事業法の技術基準を満たしているかどうかの修理済みスマホの特性試験及び試験が必要になる。当初は、この試験を実施するには技適を取得するぐらいの手間と費用が掛かると言われていたが、実際に求められる試験内容は決して難易度が高いものではなく、また携帯端末登録修理協議会では会員から試験を受託し、登録のためのノウハウの共有が行われており、また費用も比較的安価にできるようになっている。修理事業者向けに法制度に則った安全な修理を行うための啓発活動を積極的に展開したいと考えている」(望月氏)

3. 非純正以外の“偽物”パーツの解釈

 こうした登録修理業者や非正規修理業者などの「第三者修理」を端末メーカーはどのように見ているのであろうか。たとえばAppleの場合、純正の修理パーツは正規サービスプロバイダ以外には供給していない。OEMパーツは、言ってみれば自社製品の一部分を第三者が許可も得ずに勝手に設計製造してしまっているもので、そうしたパーツを使って修理が行われることを決して快くは思っていないはずだ。たとえばOEMパーツを「純正パーツ」と偽って修理を行う悪質な修理店も実在するといい、Appleはこうした事業者に対して毅然たる態度を取っている。

 たとえば2017年6月に、京都府の非正規修理業者がiPhoneの修理においてディスプレイパネルやバッテリーの偽物を使用したとして検挙された事例がある。 (参考:産経WEST 「米アップルのロゴつけた『偽iPhoneバッテリー』など所持 携帯電話修理会社社長ら4人 逮捕 京都」https://www.sankei.com/west/news/170601/wst1706010045-n1.html

 この事件はApple側から偽物パーツ使用の疑いについて京都府警に情報提供が入り、府警が捜査を行った上で修理業者が検挙されている。Appleは非純正パーツながら、Appleのロゴが刻印されていたことを問題視し、商標違反として摘発したということになる。ちなみにこの業者が純正パーツと偽ったかどうかは明らかではなく、報道によれば本事件は偽パーツを「販売目的で所持していた」だけで検挙されているようだ。


 前出の株式会社ギアの場合は、独自ルートによるOEMパーツを使用して修理を行っている。そのパーツには、一切Appleのロゴは見られなかった。

「OEMパーツは、通常の業者ならAppleロゴが入らないものを流通させているはずである。また再生パーツはあくまでも純正パーツそのものを修理して使用するという認識であり、中古部品と考えるべきだろう。そうしたパーツの在庫を持つ修理店もあると聞く」(望月氏)

 Appleのロゴを無許可で使用したOEMパーツが商標違反に問われるのは致し方ないが、再生パーツでもトラブルになった事例がある。ノルウェーでは、中国からパーツを買い付けたiPhone修理店経営者が税関で荷物を取り押さえられ、Appleの鑑定で偽造品であると認定されてパーツが廃棄された上、和解金の請求を求められたという事件が2017年に発生している。このパーツは、サードパーティ企業で組み立てられた再生パーツで、Appleロゴの入っていた部分の部材は純正パーツの一部であると考えられる。なお、この再生パーツ自体はApple製品ではないとして、ロゴは目隠しされていたとされている。

 この事件に対して修理店経営者は和解要求には応じず裁判で争い、裁判所は本年4月に、「100%互換性があり、Appleの純正ディスプレイパネルと全く同じ製品を、ノルウェー国内の修理店がアジアの生産者から輸入することを認める」と判断を下し、修理店側が勝訴した。Appleは商標権の違反を訴えてきたが、このケースでは輸入されたディスプレイパネルにAppleロゴはついていたものの、それが覆い隠されていたため商標権の違反にはならないと結論づけたという。
(参考:MOTHERBOARD ❝Apple Sued an Independent iPhone Repair Shop Owner and Lost❞ https://motherboard.vice.com/en_us/article/a3yadk/apple-sued-an-independent-iphone-repair-shop-owner-and-lost

 携帯端末修理事業者協会の伊藤氏によれば、
「こうして報道された事例は氷山の一角であり、国内で同様な訴状を受け取った修理業者は少なくない」(伊藤氏)という。

4. 自動車の修理のようにはならないのか

 従来、携帯電話が主流の時代には、携帯電話端末を第三者が修理するというケースはほとんど見られなかった。携帯電話端末自体が技術基準適合証明(技適)を受けた無線機であり、これを分解すること自体が電波法に触れる恐れがあるため、携帯電話に関してはメーカー等で修理することが常識として広まっていた。ところが、iPhoneが普及すると共に、ディスプレイの破損修理やバッテリー交換を行う修理業者が急増するようになった。iPhoneを携帯電話として認識していれば、安易な分解は避けるべきというのが携帯電話業界側の通例だったが、修理を行う業者の大半は「パーツやバッテリーの交換ならばパソコンの修理と変わらない」という認識で修理を請け負っているようだ。

 総務省はこうした世の中の動きを鑑み、修理後のスマホが技術基準に適合していることが証明され、またそれ以降に引き受ける修理についても修理方法書に従って修理および確認がなされるならば適法とするこの登録修理業者制度の施行に至った。しかしながら電波法上は問題ないとしても、正規サービスプロバイダでの修理を前提としたいAppleにとっては納得のいくことではなさそうで、スマホ修理における安全性やセキュリティの担保、知的財産権の保護といった観点からまだまだ議論していく余地がある。

 本年3月、米国・カリフォルニア州で「修理する権利」を定める法律「California Right to Repair Act」が議会に提案される計画が明らかにされ話題になった。この法案では、電子機器メーカーに対し、製品の診断・修理に関する情報や、機器・交換部品を製品所有者および独立系の修理店へ提供することを義務付ける条項が盛り込まれている。電子機器が故障した場合に修理ができるのは高額な費用が必要なメーカー、またはメーカーの指定修理業者に限定される考え方は、場合によっては製品の買い換えを余儀なくされるなど一般消費者にとって不利益であり、いたずらに電子廃棄物を増やすとういう側面もありうる。iPhoneの修理においてもこれに当てはまる。これが不当だとして、近年「修理する権利」を求める声がアメリカ各地で上がっている。

 米国ではこれまでに17州で同様の法案が提出されており、カリフォルニア州で提案されれば18州目となる。カリフォルニア州はいわばAppleの本社もあるお膝元だけに、この法案の行方に注目が集まった形だ。なおカリフォルニア州法では製品が最後に生産されてから少なくとも7年間の修理サービス提供をメーカーに義務付けている。Appleがビンテージ製品について、カリフォルニア州でのみ修理サービスや部品を提供しているのもこのためだという。

 一方、自動車業界に目を向けると、自動車のパーツ供給は純正部品とサードパーティが混在するが、これまでの自動車整備規制の緩和などによって例えばディーラーでなくても純正パーツの仕入れは可能であるし、他方でサードパーティ製のパーツで修理をした自動車の点検整備をディーラーが拒否することも考えられない。スマホの修理業界をめぐるパーツ供給のあり方についても、自動車業界同様に柔軟性を持たせてもよいのではないかと考える。

 スマホ修理の適正化は、中古スマホ市場を活性化させる上でも避けては通れない課題であり喫緊に解決が求められる。政府にはさらに踏み込んで、スマホの修理における品質や安全性を担保しつつ、修理市場の開放に向けた舵取りをお願いしたいところだ。

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 1967年、東京都生まれ。黎明期からの携帯電話業界動向をウォッチし、2000年に(株)アスキーにて携帯電話情報サイト『携帯24』を立ち上げ同Web編集長。コンテンツ業界を経て2004年独立。2007年、「携帯電話の遠隔医療応用に関する研究」に携わり徳島大学大学院工学研究科を修了、博士(工学)。2013年、青森公立大学准教授。スマートフォンの医療・ヘルスケア分野への応用をはじめ、ICTの地域社会での活用に関わる研究に従事。モバイル学会理事/副会長、ITヘルスケア学会理事。近著に『メディア技術史』(共著、北樹出版)など。1000台を超えるケータイのコレクションも保有している。

<オークネット総合研究所 概要>
 当総合研究所は、1985年に世界初の中古車TVオークション事業をスタートし、以来30年にわたりオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営。これまで培った実績とネットワークを活用し、専門性、信頼性の高い情報を発信することで、更なる業界発展に寄与することを目指しています。

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