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オークネット総研ニュースレター配信  ~世界の中古スマートフォン流通市場の実態を探る~
第17回:スマートフォン修理パーツの流通事情~中国・深センの修理パーツ市場に潜入~

2018年10月4日

 オークネット総合研究所(所在地:東京都港区/理事長:佐藤 俊司/URL:http://www.aucnet.co.jp /aucnet-reseach/)は、BtoBネットオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営し、独自の調査レポートなどを発表しています。当レポートは昨今注目される中古スマートフォン市場に関し、モバイル研究家・木暮 祐一氏に取材・調査を依頼し、ニュースレターとして不定期で配信しているものです。
 これまで当レポートでは、国内外の中古スマートフォン流通をめぐる実態に迫ってきました。中古スマートフォン流通の上で必要となるのが、破損した中古スマートフォンを修理・再生するためのサービス提供市場の存在です。世界で修理パーツの出所をリサーチしていくと、最終的に中国・深センに行き着きます。そのパーツ市場はどのようなものなのか、実際に現地を訪れてみました。

1. スマホ修理パーツの出所を探る

 中古スマートフォン流通市場にスポットを当て動向を追うようになってからおよそ3年の月日が流れた。この間に、スマートフォン(以下、スマホ)購入時における選択肢の一つとして中古品があるということを多くのユーザーが認知するようになった。同時に、中古端末流通をめぐる市場も多くの動きが見られてきた。中古端末を取り扱う事業者の参入も増加したほか、中古端末を流通させるうえで不可欠となる端末の修理や整備をめぐる業界もめまぐるしい発展を遂げている。また、こうした新たな市場を支えていくための法整備も徐々に進みつつある。
 中古スマホ市場の活性化を考える上で、スマホ修理をめぐる市場動向にも目を向けておく必要がある。なかでもスマホの修理や整備に欠かせない修理パーツの供給に関してはその実態があまり明らかにされてこなかった。たとえば街中にスマホを修理する店舗が増えているが、そこで使われている修理パーツがどのようなものなのかはあまり知られていない。iPhoneを事例にすると、アップルストアや、アップル正規サービスプロバイダで修理を行う場合はアップルから供給される純正の修理パーツで補修されるのだが、それ以外の非正規修理店には純正パーツは基本的に供給されていない。そういったところで使われる修理パーツの多くは、「OEM品」などと呼ばれる限りなく純正品に近いサードパーティ製造品が多数を占めているというものの粗悪品流通排除には至っていない。

 こうしたパーツを使う修理は、メーカーであるアップルの立場からすれば製造者としての責任も負えなくなるので見過ごせない問題となろう。しかし、わが国では2015年春から「登録修理業者制度」がスタートし、修理されたスマホ端末が法令で定める技術基準に適合していれば総務省に届出を行うことで「登録修理業者」となり、総務省の立場としてはこの届出どおりに適正に修理された端末は合法という判断をしている。しかし、修理部品については、純正品相当との表記に留めている。
 純正の修理パーツの入手が実質的に不可能で、サードパーティ製パーツに頼らざるを得ないという状況において、修理業者が使用しているこうしたパーツはどこで製造され、どのようなクオリティのものなのだろうか。今回のレポートではそのパーツ市場の実態を探ることを目指した。

2. テクノロジーの聖地となった中国・深セン

 スマホ修理を手掛ける世界中のどの修理業者に当たっても、そのパーツの製造元は「シンセン」という回答しか返ってこない。この「シンセン」とは言うまでもなく中国南東部の香港に接する都市・深センのことである。中国のシリコンバレーとも呼ばれているこの都市から、世界中にスマホ修理パーツが供給されているというのである。何はともあれ、修理パーツの巨大市場がある深センに向かった。
 深センを訪問するのは3年ぶりとなったが、その間にも大きな変貌を感じるほど著しい発展を遂げているというのを実感した。それもそのはずで、深センは1980年に鄧小平改革開放路線で当時人口わずか30万人だった漁村が深セン市に昇格し、深セン経済特区に指定したことから始まり、わずか30数年で人口1,253万人(2017年)、中国では上海市、北京市、広州市、天津市に次ぐ第5の都市へと発展したのである。1,000万単位の人口を誇る大都市で、これほどまでに発展の歴史が浅い都市は他に例がない。つまりそうしたスピードで形成されてきた深センは、現在においてもそのスピード感を衰えさせないまま成長し続けているという印象である。


 この深セン市には世界最大、秋葉原の30~40倍の規模といわれる電気街、華強北(ファチャンベイ)がある。華強北はかなり広いエリアに電気製品や電子部品を取り扱う大規模商業施設が林立している。エリアや商業施設によって取り扱っている商材が多様であり、たとえばロボットの専門店が集まるビルでは、完成品のロボットを販売する店舗から補修用部品ばかりを取り扱う店舗まで数えられないほどの店舗がひしめくといった感じだ。スマホや携帯電話の、とくに中古製品やパーツを扱っている商店が密集しているエリアは、深セン地下鉄1号線の華強路駅と科学館駅の中間ぐらいの場所にある商業ビル群の中にある。その雰囲気はまさにかつての秋葉原ラジオ会館のようなパーツ店ばかりで、密集した商業ビルが延々と何棟も連なっている中に、これもまた密集するように小さな商店がガラスショーケースを並べ商売をしている。


 この華強北の中古端末およびパーツ市場では、スマホを構成するほぼすべての部品が入手可能とされている。昨年、とあるYouTuberがこの華強北でバラバラに販売されている新品や再生品のiPhoneパーツを組み上げ完成させ、最後には新品のアダプタやライトニングケーブルと共に箱に封入するところまでの一部始終を映像にして公開し話題になった。実際に、この市場でスマホを修理するのに必要なものはパーツ、修理工具、マニュアルに至るまですべて揃う。
 修理パーツの中でも最も需要が多そうなのは、液晶パネルとバッテリーであろう。わが国においてもスマホの修理といえば破損した液晶パネルの交換や、劣化してしまったバッテリーの交換が大半である。この華強北のスマホ修理パーツ市場においても、液晶パネル、バッテリー、それに加えて補修交換用の外装パネル(筐体)を取り扱う店舗がかなりを占めているような感じだった。




 スマホを修理する上で必要な工具や機材も充実していた。前述のとおり液晶パネルやバッテリーなど動作確認が必要なパーツを販売する際に、パーツ販売店では顧客向けに専用の特殊テスターを使って異常がないことを見せていた。しかしプロのバイヤーに言わせれば、その店舗のテスター自体が信頼できないという。特にバッテリーのテスターについては、メーカーから提供されているアプリやサードパーティ製のアプリに加えて、様々なテスターが存在するが、個々の測定結果にはばらつきがあり、頻繁にパーツを仕入れるバイヤーはテスターも自前のものを持って歩くことでバッテリーの品質を独自にチェックしている。実際にこの華強北の修理パーツ市場には、目的別の特殊テスターを扱う専門店もたくさん軒を並べていた。



 修理パーツで最もニーズがある液晶パネルに関しては、サードパーティが製造したOEM品と呼ばれるパーツが主流のようだが、一方で純正品を求めるバイヤーも多い。iPhoneの液晶パネルの場合、純正の修理パーツは一般の市場には流れないため、破損した液晶パネルから液晶モジュールを取り外し、表面のガラスパネルを貼り換えて修理用の液晶パネルとして再販する事例も多い。華強北では、ヒビだらけの破損した中古液晶パネルを売っている店舗もあれば、ガラスを剥がした純正の中古液晶モジュールだけを売る店舗も点在した。さらに液晶パネルから破損したガラスパネルを剥がすための工具を売る店舗や、逆に中古の液晶モジュールと新品のガラスパネルを貼り合わせる機器を販売しているところもあった。ともかくも、あらゆるものが揃う感じである。


 スマホ端末の液晶パネルや外装が新品状態になったあとに必要になるのが化粧箱である。端末メーカー別に箱やアダプタ等の梱包物の新品を取り扱う店舗も並んでいる。従来、中古スマホ端末のリファービッシュというと、専門とする大手工場において端末を分解清掃し、必要な部品を新品に交換して再パッケージした製品のことを示していたが、もはや華強北で必要とするパーツや工具、機器を揃えれば、ノウハウさえ積めば個人レベルでも端末の再生ができ、パッケージも新品状態にして再販するといったことができてしまう。


 一般的なスマホ端末を購入するようないわゆるコンシューマは、このエリアではなく、量販店やメーカーショップに向かうのであろう。この辺りのビル群に集まってくる人たちは見る限りスマホの修理や売買に関わるビジネスをしているバイヤーばかりのようである。しかも、世界中からこの市場にパーツを仕入れに来ているようだ。アジア人だけでなく、欧州やアメリカ、中東、アフリカなど、見た限り世界中の人たちがこの華強北の修理パーツ市場に来て品定めや交渉に興じていた。
 また、ひしめき合うこうしたパーツ店も常に新陳代謝しているようだ。固定客の多そうなパーツ店であっても、ある日突然閉店してしまって、その跡地にすぐに入れ替わるように新しいオーナーが店舗を開いていく。3年前にもこの周辺のビルを訪れているのだが、その時にあった店で今回も見かけたところは本当にわずかであった。
 今回の視察では、その店舗数などからして修理パーツとして最も需要が高そうなものが液晶パネルであるということがよく理解できた。修理パーツとして売られる液晶パネルには純正品、再生品、OEM品など様々な形態があることは理解できたが、それらがどのようなメーカーによって製造されたものなのか、どのように組み立てられ、この市場に並ぶのかは、まだまだ全貌が見えてこない。
 たとえば、iPhoneの液晶パネルを取り扱うとある店舗では、そのメーカー名を掲示し、純正相当品であることをアピールしているところもあった(写真23)。


 アップルへiPhone用の液晶モジュールを納入しているメーカーが勝手にパーツを市場に供給していることは考えにくいが、実際に深センのパーツ市場ではこうしたものも多数販売されているようであった。
 いずれにしても、液晶パネルは修理パーツの中でも大きなビジネスになっているようだ。そこで、実際に液晶パネルがどのように生産されているのかを知りたくなり、液晶製造工場への取材を試みた。あいにくiPhone用のパネルを製造している工場に関してはコンタクトできなかったが、一般的な液晶製造工程であれば見学が可能という企業と巡り合うことができた。そこで液晶モジュールがどのように製造されるのかを視察することができたので、これは次回のレポートで報告したい。

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写真9

 1967年、東京都生まれ。黎明期からの携帯電話業界動向をウォッチし、2000年に(株)アスキーにて携帯電話情報サイト『携帯24』を立ち上げ同Web編集長。コンテンツ業界を経て2004年独立。2007年、「携帯電話の遠隔医療応用に関する研究」に携わり徳島大学大学院工学研究科を修了、博士(工学)。2013年、青森公立大学准教授。スマートフォンの医療・ヘルスケア分野への応用をはじめ、ICTの地域社会での活用に関わる研究に従事。モバイル学会理事/副会長、ITヘルスケア学会理事。近著に『メディア技術史』(共著、北樹出版)など。1000台を超えるケータイのコレクションも保有している。

<オークネット総合研究所 概要>
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