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オークネット総研ニュースレター配信  ~世界の中古スマートフォン流通市場の実態を探る~
第4回:中国における中古スマートフォン取引の実態

 2015年12月8日

 情報流通支援サービスの株式会社オークネット(本社:東京都港区/代表取締役社長:藤崎清孝/URL:http://www.aucnet.co.jp)は、運営する『オークネット総合研究所』(所在地:東京都港区/代表理事:山内 良信/URL:http://www.aucnet.co.jp /aucnet-reseach/)より、「中古スマホ流通」に関する第4回ニュースレターを配信いたします。本コラムは、モバイル研究家・木暮祐一氏に調査を依頼し、その実態をニュースレターとして月1~2回のペースで配信していくこととなりました。
 第4回は、中国・深センの中古スマートフォン市場の取材により知ることができた、業者向け中古スマートフォン取引の実態をルポいたします。

1.中古スマホは常に価格変動する相場の見極めが難しい動産

 深センの中古スマートフォン(以下、スマホ)商店がひしめく商業ビルでは、1階はアクセサリーや、メーカー物の新品スマホなど一般の消費者向けの商材を扱う商店が多かったが、上階に昇るにつれ、商店の扱う商材も業者向けのものが多くなっていった。まさに仕入れを目的とした小売店業者などが集まる、一般の消費者には縁遠そうな業販フロアと言った感じになっていく。
 筆者は昼過ぎにこのビルに到着したが、ちょうど各商店が開店して業務を始めるタイミングであった。秋葉原と同様に、こうした電器店ビルに顧客が集まってくるのは午後から夜にかけてである。業販向けのフロアも同様に、昼ぐらいから徐々に店主がやって来て、商品の陳列を始め営業を開始する。

 ある商店が取材に応じてくれた。店主が自分の商店(ガラスショーケース1個ほどのスペース)に到着すると、まずは商店の内側に置かれている金庫を開け、ぎっしりと詰まった商品(iPhone)を見せてくれた。この店舗では、商材の入手ルートの詳細は明らかにしてくれなかったが、中国内の買取業者を通じて仕入れたものを、中国国内で小売りをしている業者向けに販売しているようだ。金庫から取り出されたiPhoneは次々にショーケースに並べられていく。端末を実際に見せてもらったが、この商店で扱う中古iPhoneは無傷で程度良好なものばかりだった。
 しかし、この商店で扱うのは端末本体のみで、箱やアクセサリーは無い。これは後述するが、仕入れを目的に来ている業者(地方のスマホショップなど)は、こうした店舗で端末だけを購入し、その他のアクセサリー類は他の店舗で調達していくのである。

 この商店はiPhone本体だけを取り扱っていたが、商店ごとに得意とする部分に注力しているといった様子だ。たとえばこの商店のオーナーが端末仕入れでの目利きが鋭く、得意とするスマホ端末本体の取引のみに力を注いでいるということももちろんであるが、そもそもこの商店スペースの家賃が決して安価ではないことも専門店化させる要因になっている。
 聞いた話では幅2mほどのショーケース1ケース分のスペースで賃料が月額1万元(約16万円)ほどかかるという。箱やアクセサリーと一緒に販売するとなれば、その分商店にスペースが必要となる。従って、限られたスペースで最大限の収益を出すためには、余計な商品は取り扱わず、アクセサリーはアクセサリー屋に、箱は箱屋に、という具合に専門に特化して分業し、得意な商材に絞り込んで商売を行うほうが効率は良いのだろう。

写真1.2

 この商店で取り扱われているiPhoneは傷もない新品状態であった。しかし実際には一度消費者に渡った製品が、何らかの形で未使用のまま買取られたり下取りされたものと思われる。あるいは、買取り・下取りされた製品で傷や破損があった場合でも、外装を新品に交換するなどした「再生品」の場合もあるようだ。店主に「新品」の定義について尋ねたが、この深センのマーケットの場合、無傷であればみな「新品」として流通されていくようである。

 この商店の在庫商品であるiPhoneを数台見せていただいたが、フィルムこそ貼られていないが、傷一つない新品状態のものばかりである。また中にはSIMロック品もあった。こうした商店で仕入れていく小売業者は、どういうルートを経てこの商店に並んだ端末なのか、SIMロックの有無があるかなどを総合的に判断して仕入れていくという。
 商店によっては販売価格表を掲示しているところもあったが、SIMロックの有無(「鎖」と書かれているものがSIMロック品)などによって、価格は細かく変動するようだ。したがって価格変動にリアルタイムに対応できるように価格表は手書きだ。市場の端末数の増減によって価格は日々変動する。中古スマホが動産として常に価格変動しながら流通していく。じつに生々しい世界である。

写真3

 中国のこうした中古スマホ市場では、どういうルートで端末が流入してくるのか。この点に関しては取材に協力してくれた商店でも詳細な入手元までは明かしてくれることがなかった。しかし、香港での取材でも一部は中国国内に流入しているという。しかし、第1回目のレポートでも記載したように、中国では輸入に20%程度の高額な税金がかかるため、税金を払っては利益を上げられない。個人が手荷物として持ち込む場合は個人使用に限る場合のみで、せいぜい1度に運ぶ数は23台にとどめないと通関で見つかった場合に高額な関税を支払わされることになる。iPhone 6発売開始時に、銀座や大阪などの日本のアップルストアに中国人バイヤーが大量に並んで転売目的で購入していき大問題になったことも記憶に新しい。
 しかし、第3回のレポートに記載したとおり、中国~香港間の入境において中国側からの入境者の爆買いが問題となって今春からは中国側からの国民の入境回数に制限がかかるようになるなど、転売・販売目的の端末輸入が一段と厳しさを増している。そうした環境下でも、中国の中古スマホマーケットでは未だに大量の中古端末が売買されているのである。

 深センの街中には、じつは至る所で中古スマホの買取専門店を見かけた。転売を目的に端末を中国国内に持ち込んだ人たちがこうした買取専門店で換金していくのであろう。そしてこれらの買取専門店から先ほどの商業ビル内の商店のような売買業者に流れていくようだ。中国国内では深センの中古スマホ市場が最大規模のようで、このマーケットをハブとして中国国内各地に中古端末が流れていくという話をたびたび耳にした。

写真4

2.中古スマホ販売に関わるあらゆるものが全てこの商業ビル内で揃う

 取材させていただいた商店の紹介で、同じフロア内にある中古スマホ端末以外を取り扱う商店も取材させていただいた。まず訪れたのは故障端末の修理店である。前述の商店では基本的に新品に近い状態のiPhoneしか取り扱っていなかったが、逆に本体が傷だらけであったり、ディスプレイが破損しているような中古スマホを格安で販売している商店もある。こうした商店から購入した端末をリファビッシュ(再生)してもらうのにこうした修理店を活用するようだ。
 もちろん個人の消費者が自身のスマホ端末を破損させてしまってここを訪れることもあるだろう。

 わが国でも最近ではスマホ修理店が増えているが、深センのこの商業ビルの中には、1つのフロアに多数の修理店が並んでいた。当然、ここでも修理作業の価格競争があり安価に修理をしてもらえる。あえてこうした修理店に作業を依頼する業者にしてみれば、修理クオリティや価格などを見極め、馴染みとなる商店の常連となってお付き合いをするようだ。
 取材時は故障端末を修理しているところだったが、たとえば端末の外装(筐体(きょうたい))交換などもこうした店舗で対応してもらえる。スマホ端末の新品ディスプレイや新品筐体を扱う店舗も多数軒を並べており、そうした店舗から必要となる部材を購入してきて、これら修理店で仕上げてもらうという感じである。

 新品ディスプレイや新品外装を扱う店舗も見てきたが、これにはメーカー純正と謳った修理部材を扱うところから、サードパーティー製の安価な部材を扱うところまで、これも多数の商店が並んでいた。

写真5.6

 続いて案内されたのは、SIMロック解除を専門とする商店である。スマホのSIMロックを解除する方法として、スマホ端末内の情報をソフトウェアで書き換えるような方法と、SIMカードとスマホ本体の間にICチップを挟ませて端末側の通信キャリアの認識をごまかす方法(関係者の間では下駄を履かす方法などといわれる)があるという。iPhoneSIMロック解除の場合は、中国ではもっぱら後者のやり方のほうが多いようで、そのほうが安価だという。
 案内されたSIMロック解除専門の店舗店頭で、実際にSIMロックされたiPhoneの解除を実演してもらった。専用のSIMトレーにICチップ入りのSIMカードスペーサーを挟んで中国の携帯電話事業者のSIMカードを挿入、そしてディスプレイ上に表示されるいくつかの画面で何やらコードを入力して行き、一瞬にしてSIMロック解除が行われた。一部始終をカメラに収めたかったが、その作業はわずか10秒少々の手際のよさで、作業前後の写真しか撮影できなかった。
 iPhoneに関してはソニーやサムスンに対して需要が多いので、安価な解除方法が色々と出ているのであろうが、日本をはじめ世界的にSIMフリー化の流れがあり、今後はこの手のビジネスは継続が難しくなるのではないかと思われる。

写真7

 SIMロック解除というとそれだけで日本ではグレーなイメージがつきまとっていたが、アジア~欧州圏ではSIMフリーのほうが基本で、SIMロックは通信事業者に制約がかかる一方で安価に端末を購入する手段として一部で取り入れられていた程度だった。そうしたSIMロックが講じられた端末も、海外では早い時期から一定の利用期間を過ぎれば通信事業者がSIMロック解除に応じるのが原則で、ロックを解除された端末は商品価値を高めて中古市場に流通していくというのが一般的なことだった。
 一方でわが国では通信事業者を通じて端末を購入でき、同時に手厚いサポートも付加価値として提供される代わりに、SIMロックが原則という形で運用されてきた。通信事業者のサービスと端末がセットでなければ十分なユーザーサポートが行えなくなるという考え方からSIMロックが長らく続けられてきた。
 しかし、わが国でも端末と回線の分離の議論が進み、MVNO(いわゆる格安SIMなどを扱う仮想移動体通信事業者)が進出してくると同時に、通信事業者もSIMロック解除に応じる必要性が生じ、20155月以降に新たに発売された携帯電話やスマートフォンは一定条件のもとにSIMロック解除に応じる形に変わった。

 SIMロックの有無に関する認識は、わが国のユーザーにはまだ十分に浸透していないが、世界の中古市場においてはSIMロックの有無は商品価値に大きく左右する重要な要素となる。

 商業ビルの商店の話に戻りたい。修理店でスマホ端末が新品状態となり、また動作確認等もそこで行われ、さらにSIMロックも解除されたので、次に必要となるのが付属品となるアクセサリーの入手と、それを封入する化粧箱の入手である。驚いたことに、この商業ビルの同じフロア内には、付属品や端末の箱を専門に取り扱う商店まで存在する。その商店ではこれまで販売されたiPhoneiPadのすべての機種の箱と、同梱される付属品が揃っていた。ACアダプターに関しては中国国内向けのほか、欧州向けなど各国の形状のものが揃うという見事な品揃えだ。

写真8

 取材に当たっては各商店で撮影の許可を得て行ったものである。中国には深センのほかにこのような携帯電話やスマホを取り扱う大規模商業ビルが各都市にあるのだが、こうしたビル内では原則写真撮影は禁じられており、不許可で撮影などを行うと直ちにビルの関係者が飛んできてカメラを没収されたり、場合によってはビルから強制的に退去させられるので注意が必要である。

3.残すところ無く徹底的に再利用されるスマホ

 商業ビルの中で、中古スマホが再生され、SIMロックも解除され、商品として再販売できる状態になるまでの流れを目にすることができたが、そこで生じた廃棄部材はどこへ流れていくのか。

 この商業ビルを出て裏路地に入ってみると、そこはかつての秋葉原の裏路地を彷彿とさせるジャンク露天商がずらりと並んでいた。
 さらにその中で、驚くような光景を見かけた。おそらく周辺の商業ビルから廃棄されたと思われるスマホの廃部材が詰まったゴミ袋を開け、その中のものを引っ張り出して作業をしている中高年女性たちを多数目撃したのだ。修理用の部材として再利用できそうなものは丁寧に取り外し、残った廃材はリサイクル用に素材別に分類し仕分けているのである。活用できそうな部材はそれぞれ専門の部材業者に売却し、廃材はリサイクル業者に有償で引き渡しているのであろう。

写真9.10

 驚くべき中国の徹底的な部材の再利用の実態を目の当たりにした。しかし、よく考えてみれば一度生産された製品が徹底的に再生、再利用されているわけであり、このリサイクルの流れはよい意味でかなりエコロジーであるとも捉えることができそうだ。

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木暮さん

 1967年、東京都生まれ。黎明期からの携帯電話業界動向をウォッチし、2000年に(株)アスキーにて携帯電話情報サイト『携帯24』を立ち上げ同Web編集長。コンテンツ業界を経て2004年独立。2007年、「携帯電話の遠隔医療応用に関する研究」に携わり徳島大学大学院工学研究科を修了、博士(工学)。スマートフォンの医療・ヘルスケア分野への応用をはじめ、ICTの地域社会での活用に関わる研究に従事。モバイル学会理事/副会長、ITヘルスケア学会理事。近著に『メディア技術史』(共著、北樹出版)など。1000台を超えるケータイのコレクションも保有している。

<オークネット総合研究所 概要>
 当総合研究所は、1985年に世界初の中古車TVオークション事業をスタートし、以来30年にわたりオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営。これまで培った実績とネットワークを活用し、専門性、信頼性の高い情報を発信することで、更なる業界発展に寄与することを目指しています。

所在地:〒107‐8349東京都港区北青山二丁目5番8号 青山OMスクエア
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